2018 Fiscal Year Research-status Report
aPKCλ/ιの口腔癌悪性度への関与-予後サロゲートマーカ―としての有用性-
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18K17232
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
馬場 隼一 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (40644539)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | aPKCλ/ι / 口腔扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
予備実験で口腔扁平上皮癌のaPKCλ/ι過剰発現と臨床病理学的因子に相関を認めることが判明していたため,その結果を論文とするため症例数を増やして実験を行った.横浜市立大学附属病院歯科・口腔外科で加療した口腔扁平上皮癌患者76症例に対し臨床病理学的因子と予後をとりまとめた.また,その病理組織標本に対しaPKCλ/ι免疫組織学的染色を実施し,aPKCλ/ι発現ならびに細胞極在を調査した.臨床病理学的因子と予後,aPKCλ/ι発現および細胞局在の相関について,単変量解析,多変量解析を用いて統計学的に検討した.その結果,28症例(36.8%)でaPKCλ/ιの過剰発現を示した.病理組織学的分化度が低分化型の症例(p<0.01),60歳未満の症例(p<0.05),男性の症例(p<0.05)において有意にaPKCλ/ιの過剰発現を認めた.また,aPKCλ/ι細胞局在と5年累積無増悪生存率の間に有意な相関関係を認め,細胞質タイプと比較して核タイプで予後が低下していた(p<0.05).低分化型においてaPKCλ/ιの過剰発現を認めたことから,aPKCλ/ιの過剰発現が予後予測因子となり得る可能性が示唆された.また,aPKCλ/ιの細胞局在が核優位で5年累積無増悪生存率が低下したことも併せてaPKCλ/ιは口腔癌における重要な予後予測因子になりうる可能性が示唆された.以上の結果をANTICANCER RESEARCH誌に投稿し,acceptを得た. 続いて,上記で得られた知見を細胞レベルで検証するため,ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(HOSCC細胞株)をスクリーニングし,aPKCλ/ιを過剰発現するHOSCC細胞株を同定した.現在は同定したHOSCC細胞株を使用し,aPKCλ/ι阻害薬を用いた細胞増殖能の実験を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の一番の目標であった論文の投稿,ならびにacceptを得ることができた. 種々の上皮性癌の進展や転移に関与しているとされるaPKCλ/ιが口腔扁平上皮癌においても過剰発現していることが判明した.また,より悪性度の高いとされる病理組織学的に低分化型の症例において有意にaPKCλ/ι過剰発現を示した.さらにaPKCλ/ιの細胞局在が核優位になるほど予後が低下することも判明した.aPKCλ/ιの過剰発現や細胞局在が口腔扁平上皮癌の悪性度の指標となりうると考えられた.この結果を踏まえて研究を継続していくことで,本研究の目的である新たな診断方法への応用が期待できた. 一方で誤算であったのは,細かい統計学的な部分を検討するとその結果は必ずしも予定通りとは言えなかった.その原因として,サンプルとして使用した76症例について治療方法が統一されていないことが挙げられる.結果として一般的に予後が良いはずのStageⅠ症例より予後の悪いStageⅢ症例のほうが予後が良い母集団となってしまい,予後因子との統計処理を行う上で足かせとなってしまった.そこで治療方法を揃えたサンプルを使用してaPKCλ/ι免疫組織学的染色を行い,改めて統計学的解析をしたいと考えている.ただし,治療方法を揃えたサンプル収集には時間を要するため,本研究期間内には難しいと思われる. In vitroの実験系で使用するaPKCλ/ι過剰発現HOSCC細胞株の同定はやや難渋したものの予定通り同定することができた.次年度はこの細胞株を使用した研究を推進していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の臨床的な実験で得られた知見を基に,次年度はIn vitro,In vivoで証明する実験を行っていく. 同定されたaPKCλ/ι過剰発現HOSCC細胞株を使用し,in vitroでの癌増殖能と細胞浸潤能を検討する.具体的にはaPKCλ/ι過剰発現HOSCC細胞株においてaPKCλ/ι阻害薬投与群とコントロール群を設定し,作用機序の異なる2種類の薬剤(ATMとPeptide Z)を使用してその増殖能と浸潤能を比較検討し,aPKCλ/ιがHOSCC細胞株の細胞増殖能と浸潤能に関与していることを明らかにする.次いでaPKCλ/ιをノックダウンしたHOSCC細胞株を樹立し,阻害剤による効果の特異性を検証する.さらに,これらの細胞株を使用した動物実験も開始していく予定である. aPKCλ/ιと同様に癌の進展・転移に関与しているとされるIL-6やALDHにとaPKCλ/ιとの相関性を検討する.具体的には,これまでに用いた76症例の標本をIL-6ならびにALDH免疫組織染色を行い,それぞれの発現を調査する.これらの結果を臨床病理学的因子,予後因子と比較して統計学的解析を行うと同時に,aPKCλ/ιの発現とIL-6ならびにALDHの発現を比較検討することで,aPKCλ/ιとIL-6・ALDHが癌の進展・転移に相互的に関連している可能性について調査する.
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Causes of Carryover |
全体的な研究計画として,本格的に動物実験を行う次年度のほうが経費が多く必要になると予測されたため,本年度は支出を抑えて次年度に使用できるよう調整した. 次年度は本年度と同様に病理解析のための種々の抗体,それに付随するチップやスライドグラスなどの消耗品購入費が必要である.細胞実験を行うため,培養系を維持するための培地・血清・細胞培養用ディッシュが必要となる.また本格的に動物実験にも着手するため,動物購入費および飼育費,動物実験用の器具(メス,ハサミ,縫合糸など)が必要となる. また,研究成果発表のための国内では日本口腔外科学科総会、海外ではアメリカ癌学会(AACR)への学会参加のための旅費が必要となる. 得られた結果については英語論文の執筆を行うため、論文校正・投稿・別刷の経費が必要である。
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Research Products
(1 results)