2019 Fiscal Year Research-status Report
aPKCλ/ιの口腔癌悪性度への関与-予後サロゲートマーカ―としての有用性-
Project/Area Number |
18K17232
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
馬場 隼一 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (40644539)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | aPKCλ/ι / 口腔扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に行った臨床研究において,口腔扁平上皮癌のaPKCλ/ι過剰発現と病理組織学的分化度,年齢,性別において相関した.また,aPKCλ/ιの細胞局在と5年累積無増悪生存率の間に有意な相関関係を認め,併せてaPKCλ/ιは口腔癌における重要な予後予測因子になりうる可能性が示唆された.この結果を細胞レベルで検証するため,ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(HOSCC細胞株)をスクリーニングし,aPKCλ/ιを過剰発現するHOSCC細胞株を同定した.同定したHOSCC細胞株を使用し,ATMとPeptideZという2種類のaPKCλ/ι阻害薬を用いた細胞増殖能の実験を行い,細胞増殖が阻害されることを確認した.次いで,aPKCλ/ιをノックダウンしたHOSCC細胞株の樹立を目指したが,予定通りに進まず遅れが生じてしまっている. 同時に,がんの増殖,転移に関与しているとされるIL-6とaPKCλ/ι過剰発現の相関を調査した.まず,IL-6免疫組織学的染色のプロトコールを作成したのち,臨床検体76症例を用いてIL-6免疫組織学的染色を実施した.しかしながら,今回の検体ではIL-6の発現とaPKCλ/ι過剰発現のあいだに相関は認めなかった.現在は,がんの増殖に関与しているとされるALDHに着目し,aPKCλ/ι過剰発現との相関を調査すべく,免疫組織学的染色法のプロトコールを作成中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度にIn vitroの実験系で使用するaPKCλ/ι過剰発現HOSCC細胞株を同定し,これを用いてaPKCλ/ι阻害薬を用いた細胞増殖能の実験を行い,細胞増殖が阻害されることを確認した.ここまでは予定通りであったが,aPKCλ/ιをノックダウンしたHOSCC細胞株の樹立が予定通りに進まず遅れが生じてしまっている.このaPKCλ/ιノックダウンHOSCC細胞株の樹立は,続くin vivoの実験に欠かすことのできない材料であるため,急ぎ樹立を目指したい. 一方で,IL-6とaPKCλ/ι過剰発現の相関は認められなかった.現在はADLHについて調査を行っているが,E-cadherinやEGFRなど,ほかのがん増殖に関与するとされるタンパクについても調査を行う予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度はin vivoの実験を行うべく,遅れているaPKCλ/ιノックダウンHOSCC細胞株の樹立を急ぐ.樹立された細胞株を使用し,腫瘍細胞をヌードマウス皮下に導入して得られる皮下腫瘍マウスを用いいて増殖能の解析を行う.また,ヌードマウスの尾静脈から腫瘍細胞を注入して得られる血行性肺転移モデルマウスを用いて転移能の解析を行う. 癌の進展・転移に関与しているとされるALDHとaPKCλ/ιとの相関性は現在調査中である.具体的には,これまでに用いた76症例の標本をALDH免疫組織染色を行い,それぞれの発現を調査している.これらの結果を臨床病理学的因子,予後因子と比較して統計学的解析を行うと同時に,aPKCλ/ ιの発現とALDHの発現を比較検討することで,aPKCλ/ιとALDHが癌の進展・転移に相互的に関連している可能性について調査する.ほかに,E-cadherinやEGFRなどのがん増殖関連タンパクとaPKCλ/ιの相関も調査する予定である.
|
Causes of Carryover |
本来予定されていたin vivoの実験まで着手することができなかったため,一部を次年度に持ち越すことになった. 次年度は本年度と同様に病理解析のための種々の抗体,それに付随するチップやスライドグラスなどの消耗品購入費が必要である.細胞実験を行うため,培養系を維持するための培地・血清・細胞培養用ディッシュが必要となる.また本格的に動物実験にも着手するため,動物購入費および飼育費,動物実験用の器具(メス,ハサミ,縫合糸など)が必要となる. また,研究成果発表のための国内では日本口腔外科学科総会、海外ではアメリカ癌学会(AACR)への学会参加のための旅費が必要となる. 得られた結果については英語論文の執筆を行うため、論文校正・投稿・別刷の経費が必要である。
|
Research Products
(1 results)