2019 Fiscal Year Research-status Report
核-細胞間輸送に関与する受容体を標的とした口腔がん治療の基礎研究
Project/Area Number |
18K17234
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
仲川 洋介 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00714875)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん増感 / 細胞内核外輸送タンパク / exportin1 / XPO1 inhibitor |
Outline of Annual Research Achievements |
核外輸送タンパク(exportin 1=XPO1/CRM1)は、がん抑制遺伝子産物を核内から核外に輸送することでそれらの機能を減弱させ、結果としてがん細胞の増殖に寄与していると考えられている。そこで、本研究では口腔がん細胞を用いて放射線照射や抗がん薬とEXPO1阻害剤の併用により殺細胞効果に増感が認められるか否か、またアポトーシス誘導など細胞死誘導に関して分子生物学的視点からの検討を行うことを目的としている。 先ず、研究を進めていく上で、EXPO1阻害剤の細胞処理時間、処理濃度に関して再検討を行った。濃度を振り分けたEXPO1阻害剤の単剤処理を24時間行い、細胞生存率をコロニー形成法にて算出した。阻害剤単独でIC50を超えない濃度として、本研究ではEXPO1阻害剤を50nMの濃度で24時間処理で用いることとした。 口腔がん細胞を用いて、放射線照射単独時とEXPO1阻害剤併用時での殺細胞効果を検討するために細胞生存率をコロニー形成法にて比較検討したところ、放射線単独4Gy照射時で38%、6Gy照射時はで15%であったが、EXPO1阻害剤併用で放射線4Gy照射時には20%、6Gy照射時には5%であり、EXPO1阻害剤併用により放射線の増感効果を認めた。次に、5-FU(10µM)単独作用時とEXPO1阻害剤併用時を比較すると、5-FU単独時は78%であったがEXPO1阻害剤併用時は57%とであり著明な増感効果が得られた。 また、アポトーシス誘導に関しては、放射線および5-FU単独作用時と比較しEXPO1阻害剤併用時にはアポトーシスの増加を認める結果を得ている。現在、DNA損傷量に関してフローサイトメトリーによりH2AXのリン酸化量の定量化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核外輸送タンパク(EXPO1)阻害薬は単独での細胞毒性が大きく、研究に用いる妥当な処理時間・濃度の決定に時間を要したが、試行錯誤により至適作用濃度および時間が見つかり研究を進めることが出来ている。EXPO1阻害により、申請書作成時に多くの文献から予測していたように、放射線照射および5-FUに増感効果をもたらす結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線や抗がん薬に対して抵抗性を持つと言われているがん幹細胞に対して、核外輸送タンパク阻害剤を放射線および抗がん剤と併用した際に、細胞死の誘導および細胞増殖抑制にどの程度高い効果が認められるかの解析を行う。具体的には、口腔がん細胞を用いて、ヘキスト染色によるSide Population細胞の検出(SP細胞の検出)を行い、経時的なサンプリングから、がん幹細胞への効果をSP細胞の増減から検討する。代替案としてCD44で標識した細胞をソーティングし、感受性を調べる実験を検討している。
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Causes of Carryover |
2020年2月および3月に参加予定していた学会が、新型コロナウイルスの感染拡大により急遽中止となったため、未使用金額が生じた。次年度は、タンパク発現を調べるための抗体などに多くの費用が生じると考えられるため、今回生じた未使用金額の有効活用を予定している。
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