2018 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of long-term cultured murine submandibular gland epithelial cells and tissue regeneration
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18K17238
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池浦 一裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (40784088)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 唾液腺再生 / 口腔乾燥 / 細胞株 / 分化誘導能 / 筋上皮細胞 / 腺房細胞 / 導管上皮基底細胞 / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液は口腔の健康を維持するために必要不可欠な体液であり、失われた唾液腺組織再生を試みる研究は多数報告されているが、これらの研究で用いられる細胞源は腫瘍細胞由来あるいは遺伝子改変によって樹立されており、マウスにおける自然発生的な細胞株の報告はなかった。そこで研究代表者(池浦一裕)は野生型マウス顎下腺由来導管上皮基底細胞群を初代培養の表現型を保ちながら安定的に長期培養する方法を2016年にPLoS ONEに報告した。本研究の目的は研究代表者が樹立した安全かつ安定供給が可能な野生型マウス顎下腺由来培養上皮細胞株を用いて、多分化能解析と腺組織分泌機能評価が可能なシステム構築を行うことである。 樹立した細胞株は0.1%ゼラチンコートを行った接着培養系にて低カルシウム、無血清、コレラトキシン含有のCnT-07培地を用いて継代培養を行い、100継代を超えてからも免疫組織化学染色ではkeratin-14、keratin-18、p63陽性であり唾液腺導管上皮基底細胞と同様の表現型を維持している。導管上皮基底細胞群には増殖能が高い細胞が多いと報告されており(Sarah Pringle et al: STEM CELLS. 2012)、当該年度は培養条件を変更することで筋上皮細胞・腺房細胞への分化誘導を検討した。 1mMカルシウムおよび5%血清、さらに5ng/mlのTGF-β1添加刺激により筋上皮細胞マーカーであるα-SMA陽性細胞が得られ、すなわち筋上皮細胞様細胞の分化誘導が可能となったが、安定供給が可能な培地を引き続き検討中である。 腺房細胞への分化誘導は、三次元培養法が主軸である。コラーゲンゲル上では管腔構造細胞塊(Cyst)、コラーゲンゲル内では細胞塊(Salivary Sphere)が形成できており、免疫組織化学染色ではAQP5陽性であることから、引き続き遺伝子発現量解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は以下のAからFの順番で研究を進める研究計画としている。 A)樹立した細胞株の筋上皮細胞への分化誘導能の検討、B)樹立した細胞株の腺房細胞への分化誘導能の検討, C)三次元培養を用いた細胞塊(Salivary Sphere)および管腔構造細胞塊(Cyst)の作製、D)核型解析、E)幹細胞、前駆細胞マーカーの発現確認、F)CARS顕微鏡を用いた腺組織分泌機能評価アッセイ系の確立 当該年度はA,B,Cまでの研究計画手順を遂行することができた。一方で2019年4月から人事異動に伴い所属研究機関を変更、また学術研究助成基金助成金の移管に伴い、約4か月程度の研究中段を余儀なくされたがおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、先に示した研究計画手順AからFについて下記の通り実施していく方針である。A)樹立した細胞株の筋上皮細胞への分化誘導能の検討、B)樹立した細胞株の腺房細胞への分化誘導能の検討、C)三次元培養を用いた細胞塊(Salivary Sphere)および管腔構造細胞塊(Cyst)の作製 これら3項目は達成したが、その再現性と質については定期的に評価を繰り返していく必要がある。そのため、今後の研究を進めて行く中でも培養条件の検討を行っていく方針である。 次にDからFの3項目については、次に示す通りである。 D)核型解析:G-band法、Q-band法、FISH解析を検討しているが、まずはFISH解析を行う予定である。E)幹細胞、前駆細胞マーカーの発現確認:唾液腺における幹細胞マーカーは未だ同定されていないが、文献上では導管周囲に存在する未分化な細胞はCD117、CD24、CD29、CD49f、Sca-1、Musashi-1、CD44などの細胞表面抗原を発現していることが報告されており(Sarah Pringle et al: STEM CELLS. 2012)既報を参考に樹立した細胞株での発現を解析する方針である。F)CARS顕微鏡を用いた腺組織分泌機能評価アッセイ系の確立:管腔構造を有したCystを用いて、ピロカルピン塩酸塩やカルバコール刺激に対する水分泌動態をCARS顕微鏡で観察し、微小管腔の分泌機能評価アッセイ系の確立を目指す方針であるが、まずは予備実験として細胞内カルシウムイオン測定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由は「初年度に購入予定であった培養液やフラスコなどの実験消耗品、免疫組織化学染色に使用する各種抗体と試薬類について研究室内での在庫があり、当該研究を当該年度実施するにあたり十分な物品が確保出来ていたため」であり、次年度使用額と当該年度以降分として請求した助成金を合わせた使用計画である。
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Remarks |
慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室ホームページ:研究内容の紹介;基礎系研究
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