2019 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of long-term cultured murine submandibular gland epithelial cells and tissue regeneration
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18K17238
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Komagome Hospital (Clinical research laboratory) |
Principal Investigator |
池浦 一裕 東京都立駒込病院(臨床研究室), 歯科口腔外科, 医員 (40784088)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 唾液腺再生 / 口腔乾燥 / 細胞株 / 分化誘導能 / 筋上皮細胞 / 腺房細胞 / 導管上皮基底細胞 / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢、がん放射線治療、造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病などによる唾液腺機能低下に伴う口腔乾燥症は患者の生活の質を著しく低下させる。そのため失われた唾液腺組織再生を試みる研究は多数報告されており、これらの研究ではヒト・ラットなどから樹立した唾液腺細胞株を用いているが、それらは腫瘍細胞由来・遺伝子改変動物由来であり、マウスにおける自然発生的な細胞株の報告はない。また唾液腺細胞を初代培養の表現型を保ちながら長期間培養することは困難とされ、現在までごく短期間の培養報告があるのみである。若手研究(課題番号:18K17238、平成30年度から平成31年度)では唾液腺組織再生に有用な細胞源の確保と特性解析を行い、樹立した細胞株の筋上皮細胞と腺房細胞への分化誘導能の検討を行った。 具体的な細胞株樹立方法は次の通りである。3週齢、メスの野生型マウスより顎下腺を摘出し、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼにて酵素処理を行った。単離した細胞は0.1%ゼラチンコートを行った接着培養系にて低カルシウム、無血清、コレラトキシン含有のCnT-07培地を用いて初代培養を行い、single cell cultureにより増殖能の高い細胞群を抽出し、継代培養を行った。(Ikeura K et al: PLoS ONE. 2016)その結果、低カルシウム、無血清培地で培養した細胞に対して0.6mMカルシウムおよび5%血清、さらに5ng/mlのTGF-β1添加による刺激を加えることで筋上皮細胞マーカーであるα-SMA陽性細胞が短期間ではあるが得られることが確認できた。またコラーゲンゲルを用いた三次元培養法では細胞塊(Salivary Sphere)および管腔構造細胞塊(Cyst)の作製に成功し、免疫組織化学染色では腺房細胞マーカーであるAQP5を発現する細胞群を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は野生型マウスから唾液腺由来の細胞株を樹立し、増殖性細胞の特性解析を中心に研究を行ってきた。その結果、野生型マウス顎下腺由来導管上皮基底細胞群を初代培養の表現型を保ちながら安定的に長期培養することが可能となった。そして得られた導管周囲の増殖能が高い細胞の特性解析を行うことで腺組織機能再生につながる病態生理に迫ることができると考えており、本研究課題の進捗において筋上皮様細胞、腺房様細胞への分化誘導を試みることができていることから引き続きの唾液腺組織再構成に向けた準備に取り掛かれると考えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)導管上皮基底細胞群、筋上皮様細胞、腺房様細胞からの唾液腺組織再構成 本研究を遂行する上での具体的な工夫として、コラーゲンゲルを用いた三次元培養法では細胞に対して全面が足場となるため細胞塊を形成することにおいては有用であるが、分泌評価を行うには適さない形態となる。そのため2%~10%コラーゲン懸濁培養液を作成し細胞極性を利用することで管腔構造を誘導する方法を引き続き応用する。しかし、コラーゲンゲルを最終的に完全に除去することが困難なため、磁性粒子を利用した三次元培養を検討している。さらに腺房細胞マーカーであるAQP5の発現と局在を確認する。上記と並行して細胞の安全性を確認するための核型解析、既報の幹細胞、前駆細胞マーカーを発現する様な細胞群であるかの確認を行っていくとともに唾液腺における幹細胞同定を目指したいと考えている。 2)腺組織分泌機能評価が可能なシステムの構築 唾液腺様の細胞塊(Salivary Sphere)では既存の唾液分泌促進薬(ピロカルピン塩酸塩)に反応するかどうかを細胞内カルシウムイオン測定を用いて、管腔構造細胞塊(Cyst)では水分泌動態をCARS顕微鏡で観察し、微小管腔の分泌機能評価アッセイ系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の異動・変更に伴い研究計画に遅れが生じたため。 免疫組織化学染色を行うにあたり、凍結切片作製装置(中国製)を購入予定で計画していたが新型コロナウイルス感染症の流行と時期が重なり中国からの輸入経路が断たれたため研究計画に遅れが生じたため。
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