2018 Fiscal Year Research-status Report
リラキシンを応用した新規顎矯正治療法開発に関する動物実験的研究
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18K17246
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 洋介 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 非常勤講師 (50706918)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リラキシン / 顎顔面骨縫合 / 縫合の拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
リラキシン(RLN)はインスリン様ペプチドホルモンの一種で、恥骨結合や子宮周囲の線維性結合組織を弛緩させ分娩を補助することで広く知られている。本研究では、磁性制御型リポソームにより標的指向化されたRLN2の正中口蓋縫合(MPS)の拡大に対する作用を解析することを目的とした。イヌの実験に先立ち、ラットMPSを使用して予備実験を行った。36匹の雄性ラットをControl群(非拡大群)、Vehicle群(liposomesのみを投与)、RLN-lipo群(RLN2-liposomeを投与)の3群に分け実験に用いた。Vehicle群およびRLN-lipo群は7日間のMPS拡大を行った。さらに、各群を7日間の拡大を行った拡大群と、拡大後14日間の保定を行った保定群の2群に分けた。RLN2-liposomeをMPSに局在させるために、ネオジウム製マグネットシートをMPS直上の口蓋粘膜に縫合固定した。In vivo imagingにより、投与72時間後においてもMPSにリポソームの局在を認めた。免疫組織化学的染色ではMPSにおけるRLN2の局在を認めた。RLN受容体2(RXFP2)はRLN-lipo群のosteogenic front(OF)に発現し、RLN受容体(RXFP1)は全ての群で発現していた。MPSの拡大および拡大後のOFにおける骨形成は、RLN-lipo群で亢進していた。RLN-lipo群ではOFにおける鋸歯状の骨改造を認め、MPSにおけるペリオスチン(POSTN)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)の発現が亢進していた。上顎骨におけるスクレロスチン(SOST)の発現は有意に減少した。これらの知見よりRLN2はMMP-1およびiNOSの分泌を介して縫合部の拡大を促進させ、OF近傍に存在する骨芽細胞におけるPOSTNの発現を介して骨形成を亢進する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の結果、ラットMPSの拡大中および保定中にRLNを投与することでOFに著しい鋸歯状の骨改造を認めたが、これはMPSのコラーゲン線維の溶解によるメカニカルストレスの不均衡によるものと考えられる。分泌タンパクであるPOSTNはコラーゲンの豊富な組織において機械的刺激に応答し、骨形成を促進すると報告されている。またPOSTNはWnt-βcateninシグナルを直接的に活性化し、間欠的な副甲状腺ホルモンの刺激によりSOSTの発現を抑制することが知られている。本研究においてSOSTの発現はRLN-lipo群で低下した。これは機械的刺激の負荷によると考えられる。現在RLNのPOSTNやSOSTに対する直接的、間接的作用は報告されていないため、今後in vivoおよびin vitroの実験系でMPSにおけるこれらの分子の発現メカニズムについて解析を行う必要があると考えられる。また、今後はイヌを使用した同様の実験で、MPSに加えて、頭蓋顎顔面の縫合部への効果について広く検索していく必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気制御型リポソームにより標的指向化されたRLN2は、縫合部の線維芽細胞においてMMP-1の分泌を介して縫合部の拡大を促進し、OF近傍の骨芽細胞においてPOSTNの発現を促進することで骨形成を促す可能性が示唆された。本研究で得られた知見は、頭蓋顎顔面領域における低侵襲的で効果的な顎整形力を利用した矯正歯科治療の新規開発に貢献すると考えられる。分泌タンパクであるPOSTNはコラーゲンの豊富な組織において機械的刺激に応答し、骨形成を促進すると報告されている。またPOSTNはWnt-βcateninシグナルを直接的に活性化し、間欠的な副甲状腺ホルモンの刺激によりSOSTの発現を抑制することが知られている。本研究においてSOSTの発現はRLN-lipo群で低下した。これは機械的刺激の負荷によると考えられる。現在RLNのPOSTNやSOSTに対する直接的、間接的作用は報告されていないため、今後in vivoおよびin vitroの実験系でMPSにおけるこれらの分子の発現メカニズムについて解析を行う必要があると考えられる。
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Causes of Carryover |
イヌを使用した実験に備え、次年度以降の動物飼養料に計上するため。
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