2018 Fiscal Year Research-status Report
TRPV1に着目した矯正歯科治療時の疼痛メカニズムと歯槽骨吸収の解明
Project/Area Number |
18K17251
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大倉 麻里子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (50779634)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 矯正 / TRPV1 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正歯科治療において歯の移動時に疼痛が生じるが、その詳細なメカニズムは不明である。Transient receptor potential cation channel subfamily V member (TRPV)1は末梢部での疼痛知覚や、歯槽骨吸収の抑制に関与しているとされるが、矯正的歯の移動時における機能については明らかになっていない。本研究は、TRPV1と同じ感覚神経に発現しており、TRPV1の活性を誘発させるanoctamin1 (ANO1)との疼痛メカニズムに着目し、closed coil springによる矯正力付与モデルラットを用いて、TRPV1とANO1の関係を遺伝子工学的および免疫組織学的に検索しようとするものである。さらに、矯正力付与モデルラットにTRPV1やANO1のアンタゴニストを投与することで、生理学的な疼痛行動実験だけでなく歯槽骨吸収の抑制度も解析し、歯の移動時におけるTRPV1を基軸とした新規メカニズムを総合的に探索するものである。 平成30年度は、closed coil springを用いた矯正力付与モデルラットを作製し、牽引側・圧迫側の歯根膜組織および歯髄組織に対して免疫組織化学的解析を行った。矯正力付与モデルラットの作製方法は、上顎右側切歯・第一臼歯間に活性化したNi-Ti closed coil springを装着し、約25gの力を7日間付与した。免疫組織化学的解析として、TRPV1に対する特異的抗体を使用し、正常および矯正力付与後の歯根膜組織、歯髄組織におけるTRPV1局在を酵素抗体法および蛍光抗体法を用いて解析を行った。その結果、TRPV1は神経組織の一部と象牙芽細胞にその発現が明らかになったことから、矯正力付与時において、TRPV1を介した疼痛制御システムが存在している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
矯正力を付与した場合の、ラット歯根膜組織および歯髄組織におけるTRPV1局在解析は本研究達成の基盤的部分であるため、これに関する検索を詳細に行った。そのため、次段階の検索がやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
次段階の検索として、歯根膜組織および歯髄組織におけるANO1の発現解析を行い、TRPV1との関係性について検索する。また、三叉神経節におけるTRPV1およびANO1の局在や、リアルタイムPCR法を用いた遺伝子発現量についても解析を行う。 さらに、TRPV1およびANO1のアンタゴニストを用いた行動学的解析を行う。約25gの力を1、3、5、7、14、28日間付与したラットを実験群、closed coil springを力を付与しない状態で装着したラットをsham群とし、TRPV1アンタゴニスト、ANO1のアンタゴニスト、あるいはネガティブコントロールのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を腹腔内投与する。その後ラットの撮影を行い、歯の移動に起因する疼痛に対する反応行動の一つとされているグルーミング行動時間の解析を行う。 以上のように、課題達成のために段階的に検索を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
モデルラットを用いた実験であったため、検索中のTRPV1の詳細な組織学的検索に時間がかかりANO1の解析ができなかった。次年度使用額を用いてANO1の検索を行う。
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