2018 Fiscal Year Research-status Report
下顎頭軟骨破壊機序の解明とコールドレーザーを応用した変形性顎関節症治療法の確立
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18K17256
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柄 優至 広島大学, 病院(歯), 助教 (50737682)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 半導体レーザー / 超短パルスレーザー / 疼痛緩和 / 顎関節 / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験では、従来よりもパルス幅を短縮化することにより、生体組織への熱的損傷を最小限にし、かつ深部到達性を高めたコールドレーザーを用いて、顎関節軟骨破壊機序に対する影響を検討するとともに、下顎頭軟骨細胞の基質代謝に及ぼす影響とその作用機序を解明することが目的である。 平成30年度予定していた、下顎頭軟骨細胞の基質代謝に対する半導体レーザー照射の影響および、機械的刺激および炎症性サイトカイン添加時におけるレーザー照射の影響についての検討は、現在ヒト由来の膝関節軟骨細胞(NHAC-kn)を用いて照射条件の検討を終え、1L-β添加時において、レーザー照射が基質代謝や炎症性サイトカインにどのような影響を及ぼすかの検討を行った。 定量 PCR により、1L-β添加(100g/ml)群において実験開始4時間後に細胞を回収し、TNF-αおよびCOX2の遺伝子発現が上昇するのを確認した。さらに、1L-β添加とレーザー照射(4J/cm2)を行った群では、1L-β添加群と比較して、IL-1β、TNF-αおよびCOX2の遺伝子発現の減少が認められた。また、MMP1およびMMP3も同様に、1L-β添加とレーザー照射を行った群では、1L-β添加群と比較して、遺伝子発現の減少が認められた。 また、定量 Western blot 解析を用いてp-ERK、p-JNKおよびp-p38を調べ、リン酸化経路の検討を行った。1L-β添加とレーザー照射を行った群では、1L-β添加群と比較して、p-ERKのタンパク発現が抑制された。 以上の結果より、超短パルス発振の可能な半導体レーザー(コールドレーザー)照射は、炎症性サイトカインや気質代謝に関わる遺伝子の発現を抑制することによる、抗炎症効果が示唆された。また、半導体レーザー(コールドレーザー)照射による効果がp-ERKに関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在のIn Vitroにおける実験は、細胞培養に関しては、ラット軟骨細胞株 (ATDC5) およびヒト膝関節軟骨細胞(NHAC-kn)の培養を行っている。各種細胞を用い、細胞を回収し、定量 PCR 解析および定量 Western blot 解析を行っている。当初予定していたブタ由来の細胞に関しては、採取培養の過程の手技等が困難であり、難しい状況である。今後も使用を検討していくが、本実験において上記二つでも充分と考える。また、ヒト膝関節軟骨細胞(NHAC-kn)のメーカー推奨の培養関連材料は海外からの輸入であり、在庫が国内になったこと、生産数が少ないことから、入手に時間がかかってしまっている。このため実験開始が遅れてしまったこともあり、進行がやや遅れている。 実験2のブタ下顎頭軟骨細胞を培養し、培養細胞圧縮装置 (Flexercell Compression Plus Unit)を用いて機械的圧縮刺激を負荷し、レーザー照射が基質代謝や炎症性サイトカインにどのような影響を及ぼすかを検討する予定であったが、ブタ由来の細胞の培養が難しいため行っていない。しかし、その代わりに炎症性サイトカイン(1L-β)添加時におけるレーザー照射の影響を検討している。 研究実績の概要に結果を示したように、30年度の実験予定である、培養下顎頭軟骨細胞の基質代謝に対する半導体レーザー照射の影響の検討、機械的刺激および炎症性サイトカイン添加時におけるレーザー照射の影響の検討、というテーマにおいて、好ましい結果がでており、総合的には順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のIn Vitroにおける実験は、細胞培養に関しては、ブタ由来の細胞の採取培養の過程の手技の確立を目指す。しかし、主な実験はヒト膝関節軟骨細胞(NHAC-kn)を用いて行うこととし、円滑に実験が進むよう行っていく。1L-β添加時において、レーザー照射が基質代謝や炎症性サイトカインにどのような影響を及ぼすかの検討については、好ましい結果がでており、引き続き行っていく予定である。2019年度行う予定である、動物実験に関しても平行して行っていく。ラットの下顎頭を切断し、TMJ-OA モデルを作製しレーザー照射を行い、顎関節部のCT撮影や切片を作成し組織学的、形態学的な検討を行う。また、脳の切片を作成し、中枢でのTMJ-OAモデルへのレーザー照射時の疼痛緩和の検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度に残金があるが、3425円と少額であり概ね計画通りであると考える。2019年度の消耗品の物品代として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)