2018 Fiscal Year Research-status Report
コールドレーザーを応用した歯の移動時の歯周組織代謝活性化と臨床応用
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18K17257
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
郡司 秀美 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (80806688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コールドレーザー / 歯の移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正歯科治療は、正常な口腔機能の獲得を目的とする医療であるが、治療期間が長期に及ぶことが懸念される。矯正歯科治療中の歯の移動は骨リモデリングにより可能となるが、歯根形態などの局所的要因や、年齢などの全身的要因の影響を受ける。もし、矯正歯科治療中に特定の歯の移動を促進させることができれば、より効率的な矯正歯科治療を行うことが可能となる。レーザーは励起状態にある物質の誘導放射により発生する特定の電磁波であり、特に半導体レーザーは生体親和性が高く医療に広く応用されている。レーザー照射による適度な熱上昇は細胞活性を高めるが、過度な熱が生じると組織表面が破壊される。近年、超短パルスを発振できるスーパーパルス半導体レーザー (コールドレーザー) が開発され、組織に熱損傷を及ぼすことなく、高い光エネルギーを浸透させることが可能となった。しかしながら、コールドレーザーを歯の移動に応用した報告は認められない。本研究では、コールドレーザー照射が歯周組織代謝調節機構に及ぼす影響について検討し、治療期間を短縮する新規の矯正歯科治療法の確立を目的とする。初年度は、以下の検討を行った。 ①コールドレーザー照射が歯周組織細胞の増殖能に及ぼす影響 マウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞株 (MC3T3-E1)に対してレーザー照射を行った際の細胞増殖への影響について検討を行った。さらに、レーザー照射による各細胞増殖時の動態変化と損傷された細胞の修復能について、生細胞イメージングを用いてリアルタイムに解析した。 ②コールドレーザーの歯周組織構成細胞におけるシグナル伝達経路の検討 レーザー照射が細胞内伝達物質に及ぼす変化について検討を行う。MARK/MEK シグナル伝達経路の中間経路として知られるMAPK/ERK 1/2 、p38 MAPKおよびSAPK/JNKのリン酸化について定量Western blot解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、MC3T3-E1細胞に対するコールドレーザー照射による細胞増殖能の検討を行った。また、次年度に予定していた、コールドレーザーの歯周組織構成細胞におけるシグナル伝達経路の検討について先に着手し、初年度に予定していた歯周組織培養細胞における基質代謝能への影響を次年度に変更することとした。 そして、MC3T3-E1細胞に対してコールドレーザー照射を行うことにより、細胞増殖能が亢進することが明らかとなった。そして、コールドレーザー照射がMC3T3-E1のシグナル伝達経路に及ぼす影響の検討についてはMARK/MEK シグナル伝達経路の中間経路として知られるMAPK/ERK 1/2 のリン酸化を亢進させ、p38 MAPKおよびSAPK/JNKのリン酸化を抑制することが明らかとなった。以上の内容について論文投稿し、Lasers in Medical Scienceに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周組織培養細胞における基質代謝能への影響について引き続き検討を行う。 各細胞に対し、レーザー照射を行った際の骨代謝マーカー (ALP、BSPなど) および 骨吸収マーカー(RANKL、OPGなど)の発現レベルについて定量PCRを用いた遺伝子解析およびWestern blot解析を行う。また、ALP活性および培養液中のCaレベルを定量評価し、アリザリンレッド染色法を用いて石灰化能の検討を行う。また、矯正治療時の歯の圧迫側を想定して、圧迫刺激存在下における歯周組織構成細胞の代謝に及ぼす影響を検討する。 また、矯正治療時の歯の牽引側を想定して、牽引刺激存在下における歯周組織構成細胞の代謝に及ぼす影響の検討を行う。 さらに動物実験として、ラットの上顎門歯と第一臼歯間にクローズドコイルを装着し、門歯を固定源として第一臼歯を近心に移動させるモデルを作製する。レーザー照射を行い、歯の移動に及ぼす影響について検討する。組織切片を作製し、HE染色を行うとともに、細胞活性因子であるKi-67、BrdU、PCNAおよび骨代謝関連マーカーの免疫組織化学染色を用いて評価する。 以上の結果について論文の投稿を目指す。
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Research Products
(2 results)