2018 Fiscal Year Research-status Report
根未完成歯の硬組織誘導を目的とした新規治療法開発―覆髄剤と低出力パルスの併用―
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18K17267
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
藤田 茉衣子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (20784797)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歯髄細胞 / S-PRGフィラー / 細胞増殖 / 象牙芽細胞様分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
学童期に多発する幼若永久歯の外傷において、歯根完成を誘導させることが治療の成功において最重要である。根未完成の外傷歯を正常に近い状態で成長誘導させる新たな治療方法の開発を試みる。治療に用いられる薬剤と、骨折治療に際して新鮮骨折・遷延骨折治癒に拘わらず治癒過程を促進させる低出力超音波パルス(LIPUS)照射による刺激を併用し、歯根未完成歯牙の外傷モデルに対して、断髄面の硬組織誘導および歯根形成について検討する。本研究は、炎症を機転とする病態の治癒過程に着目して歯髄組織の再生能力を活用する、非侵襲的歯根再生療法という画期的な治療方法の確立を目標とするものである。 外傷は上顎前歯部に多く、特に学童期においては歯根未完成歯の場合が多い。損傷が歯髄に及ぶ場合、生活歯髄切断法やアペキソゲネーシスやアペキシフィケーションといった処置により断髄面に硬組織新生を促し、さらには正常な歯根完成を促さなくてはならない。現在使用されている覆髄材は、主に水酸化カルシウム製剤である。水酸化カルシウム製剤は高いpHにより、抗菌効果を示すが、細胞毒性が強いことが報告されている。また最近は、新規材料としてPRGフィラー含有材料に関しても着目されている。PRGフィラー含有材料は様々なイオン徐放性を特徴としており、これまでPRGフィラー含有材料について研究を行い、歯髄細胞に対して増殖促進的な効果、さらには歯髄細胞由来の象牙芽細胞様細胞分化を極めて強力に促進することを明らかにした。 各種覆髄材とLIPUSの併用は歯根形成に重要な細胞を外傷部位に誘導および活性化し、歯根完成を促進すると期待できる。覆髄材の化学的な作用に加えて非侵襲的な機械的刺激を負荷することで、歯根形成を正常に誘導する新しい治療法として、手技的な要素と薬剤の選択で決まってしまうの現状を打破できる可能性が大いにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度では当初計画していたイヌ外傷モデルの作製には、実験動物の確保・飼育が困難であったため、平成32年度に計画しているイヌ歯髄細胞を用いたin vitro実験を行った。 イヌ外傷モデルと比較するために、実験で用いる4~6 カ月の雄イヌの歯根未完成歯から歯髄細胞を採取した。今までの研究で用いていたヒト歯髄細胞とイヌ歯髄細胞とは性質が全く異なっていた。コラゲナーゼ処理を行わずに、採取した歯髄を培養皿の底面に固定し、培養した。十分な細胞数になるまでに経過が長かったが、十分な細胞数が得られた。 従来治療に用いられている水酸化カルシウム製剤とPRGフィラー含有材料の抽出液を作製し、採取したイヌ歯髄細胞を用いて実験を行った。 まず、増殖に関して細胞数測定とMTT試験を行い評価した。 分化においてはS-PRGフィラー含有セメントと水酸化カルシウム製剤の抽出液を作製し、それぞれイヌ歯髄細胞を培養しALP活性染色を行った。さらに、培養細胞からmRNAを採取し、cDNAを合成した。cDNAを用いて象牙芽細胞用分化のマーカーとなる骨形成因子、I型コラーゲン、オステオカルシン、象牙質シアロリンタンパク質などのプライマーを用いてリアルタイムPCR を行い、発現を解析した。抽出液のみならず、骨芽細胞分化誘導培地も併用しmRNAレベルでの発現を確認した。また、培養細胞に対して象牙芽細胞様細胞への分化のマーカーに対する抗体を用いて染色を行い、タンパクレベルでの発現においても解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
歯根未完成の歯における外傷モデルの作製を行う。本実験では4~6 カ月の雄イヌを用い、術前にエックス線写真で齲蝕がない事を確認した根未完成歯を実験に使用する。全身麻酔下、歯牙に露髄させ、覆髄材で断髄面を覆い、コンポジットレジンを充填する。象牙質新生を観察するために術後テトラサイクリンとカルセインを皮下投与する。最終ラベルの3日後(処置後4週)に屠殺を行う。下顎骨を採取固定後マイクロCT で撮影し、覆髄面にできた新生象牙質の面積、密度と歯根形成の状態を解析ソフトで計測する。 さらに分化のマーカーとなる骨形成因子、I型コラーゲン、オステオカルシン、象牙質シアロリンタンパク質などに対する抗体を用いて染色を行い、分化に伴うマトリックスの変化を観察する。
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Causes of Carryover |
生後4~6カ月のイヌが1回の実験で2匹であり、再現実験においても最低2匹以上が必要であり、さらに飼育による費用が必要である 。 動物実験の処置時の手術用具、屠殺時には専用の固定解剖台や灌流固定に必要な器具、生活歯髄切断モデルを作製するための器具が必要である。
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