2019 Fiscal Year Research-status Report
乳児期ストレスに起因する口腔顔面領域での異常疼痛の発症メカニズムについて
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18K17268
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
保田 将史 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任講師 (60643715)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳児期ストレス / 異常疼痛 / ストレスホルモン / 神経周囲細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
疼痛には,ストレスにより症状が発現する心因性のものが存在する。心因性の疼痛は口腔顔面領域にも見られるが,器質的変化を伴わないため原因不明の痛みとして取り扱われることが多く,明確な治療法は確立していない。 乳幼児期に虐待を経験した成人は侵害刺激に対する感受性が増強するとの報告がある。このことから、乳幼児期の慢性的なストレスの暴露は異常疼痛の発現に関与することが示唆される。 本研究において作成したネグレクトをモデル化した母子分離モデル動物では,口髭部皮膚への機械侵害刺激に対する逃避閾値が通常飼育したラットと比較して有意に低下することを見出した。この結果より,乳児期の慢性ストレスにより三叉神経領域においても侵害刺激に対する感受性の変化が引き起こされることが示唆される。 さらに、ネグレクトを想定したモデル動物において血中のストレスホルモン濃度をELISA法にて測定したところ、特定のホルモンの濃度が有意に増加していることが確認できた。 疼痛の発現には,神経細胞および神経周囲の細胞が関与することが示されている。神経周囲細胞の1つであるIba1 陽性細胞が慢性ストレスにより活性化させることは知られており、異常疼痛の発現に関与することが示唆されている。そこで今後は,母子分離による過剰分泌されるストレスホルモンと末梢神経節でのIba1陽性細胞の活性に注目し、異常疼痛の発現との関連性について詳細な解析を行うことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ネグレクトをモデル化した母子分離モデル動物を用いて血中のストレスホルモンの測定を行ったものの、原因として考えていた物質の有意な増加は認められなかった。そのため、実験計画の見直しを行っていたことから実験の遅れが生じた。また、本研究のモデル動物の作成に2か月以上の時間がかかることも時間がかかった要因の1つであると考えられるさらに、新型コロナウイルスの流行に伴い、実験室への出入りを自粛していたことも研究遂行に支障をきたす原因となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究結果より、幼児期ストレスは顎顔面領域において異常疼痛を発現させることが示唆される。この疼痛感覚の変化には神経周囲細胞であるIba1陽性細胞が関与していると考えており、これまでに特定を行ったストレスホルモンとの関連についての解明を目的とした実験を計画している。また、痛覚異常を引きおこした実験動物への薬剤投与も計画しており、異常疼痛緩和を目的とした治療方法の足掛かりとしたい。
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Causes of Carryover |
・新型コロナウイルスの影響があり、研究室への出入りを自粛していた。そのため、物品購入を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。 ・本年度は実験動物購入業者と打ち合わせを行い,モデル作成を外部委託することができた。費用が掛かるものの時間の短縮に大いに貢献することができたため、次年度も引き続き外部委託を行う予定である。また、当初想定していたストレスホルモンは本研究においては関与していないことが明らかとなったため、ターゲットして有力であると考えていた神経周囲細胞も異なるものである可能性が出てきた。このため、様々な種類の抗体を用いて特定を行う予定である。これには多くの購入費用が掛かることから助成金を充てることを計画している。また,現在進めている研究活動継続のため,専門的な器具を引き続き購入していく予定である。
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