2023 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanism of unusual pain in orofacial region induced by stress in infancy
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18K17268
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
保田 将史 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任講師 (60643715)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳児期ストレス / ステロイドホルモン / Iba1 |
Outline of Annual Research Achievements |
過度なストレスに曝露されることによって心因性疼痛が引き起こされることはよく知られているが、その発現機序については不明な点が多く残されている。心因性疼痛は身体的変化を伴わないため原因不明の痛みとして取り扱われ、治療に苦慮することが多い。 実際、児童虐待を経験した成人は侵害刺激に対する感受性が増強するとの報告がある。本研究では、生後早期の異常なストレスの一つであるネグレクトをモデル化した母子分離モデル動物を作製し、口髭部皮膚への機械侵害刺激に対する逃避閾値が正常ラットと比較して有意に低下することを見出した。この結果より、乳児期の慢性ストレスによる侵害刺激に対する感受性の変化は、口腔顔面領域においてもみられる事が示唆される。 本研究におけるモデル動物において、ストレスホルモンであるカテコールアミンおよびセロトニンの血中濃度を通常飼育した動物と比較して有意な増加は認められなかったものの、ステロイドホルモンの有意な増加が認められた。 疼痛の発現には,神経細胞だけでなく神経周囲の細胞も関与することが示されており、慢性ストレスにより活性化させる脳内の Iba1 陽性細胞が重要な働きを持つと報告されている。これをうけ、免疫組織化学的手法を用いて実験を行ったところ,口腔顔面領域の疼痛に関与する三叉神経節内において、Iba1陽性細胞が発現していることを確認した。次に、Iba1に対して抑制的に働くミノサイクリンを投与した母子分離モデル動物において口髭部皮膚への機械侵害刺激に対する逃避閾値の有意な上昇が認められた。 これらの結果から、生後早期の異常なストレスによりステロイドホルモンの分泌が増加し、神経周囲細胞であるIba1陽性細胞の活性化を引き起こし、異常疼痛が発現することが示唆される。
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