2019 Fiscal Year Research-status Report
Socioeconomic inequalities in cancer incidence: mediation of behavioral factors and immune dysfunction
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18K17351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
財津 將嘉 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10372377)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会格差 / がん / 最長職業 / リスク / 循環器 / アルコール / 生活習慣 / 免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、ハーバード公衆衛生大学院のIchiro Kawachi教授と共同で開発した、日本標準職業分類及び日本標準産業分類による網羅的なアルゴリズムにより導かれる健康社会決定要因のひとつの指標である「最長職業」を用いて、神奈川県地域がん登録における膵臓がんおよび膀胱がんの予後格差、および腎細胞がんの病理組織分布の男女差を明らかにした。また、遺伝的にアルコール代謝が弱い日本人において、生活習慣リスクである飲酒について、精緻な評価指標である生涯アルコール摂取総量により、少量飲酒によるがんリスクおよび用量反応関係を検証した(がん6万症例、対照6万症例)。その結果、がん全体についてみると、飲酒をしなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、また、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは低~中等度の飲酒で容量依存的に上昇し、飲酒指数が10 drink-yearの時点でオッズ比が1.05倍に上昇した。喫煙習慣、生活習慣病、職業で調整しても、同様の傾向が観察された。また、各種がんによって少量飲酒の影響は様々であったが、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、食道がんなどの比較的頻度の高いがんが、少量飲酒による全体的ながん罹患リスクの上昇に関与していた。これらの研究実績については国内の学会や医学雑誌紙面上にて報告した。また、免疫応答の経路に関して、腎細胞がんの病理組織分布において、各職業における全身・局所の炎症性免疫反応、特に白血球分画のneutrophil-to-lymphocyte ratio(NLR)および腎細胞がんの病理組織のhigh mobility group box 1(HMGB1)に注目し、臨床検査データ収集および免疫染色を100症例実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通り進行している。日本標準職業及び産業分類を用いて、現職および過去3つの職業から最長の職業を同定し、日本標準職業分類及び日本標準産業分類にて分類される約10,000種類以上の職業に照らし合わせ、網羅的に分類・抽出するアルゴリズムを完成させた。この完成させた、新たな指標である「最長職業」を用いて、日本における各種がんおよび循環器疾患の罹患リスクに職業格差があることを報告し、がんの予後にも職業格差が存在することを報告してきた。また、少量飲酒によるがんリスクおよび用量反応関係を検証し、がん全体についてみると、飲酒をしなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、また、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは低~中等度の飲酒で容量依存的に上昇し、飲酒指数が10 drink-yearの時点でオッズ比が1.05倍に上昇することを報告した。喫煙習慣、生活習慣病、職業で調整しても、同様の傾向が観察された。また、各種がんによって少量飲酒の影響は様々であったが、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、食道がんなどの比較的頻度の高いがんが、少量飲酒による全体的ながん罹患リスクの上昇に関与していた。さらに、生活習慣によるcausal pathwayの経路(飲酒および喫煙)を評価したが、部分的には飲酒および喫煙で説明できたものの、この経路以外の職業格差が存在することも明らかにした。この知見をもとに、現在、分子細胞レベルの免疫応答の経路によるがんリスクの職業格差について検証を開始した。腎細胞がん患者のNLRのデータ収集、および腎細胞がんの病理組織のHMGB1の免疫染色を100症例分実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本におけるがんおよび周辺疾患のリスクの社会格差は、飲酒や喫煙だけでは説明できかった。そこで、まず腎細胞がんについて、慢性ストレスのバイオマーカーとして考えられる白血球分画および病理組織の免疫染色(HMGB1、Treg細胞等)によって、免疫応答とがんの病理所見との関連を統計学的に検証する。さらに対象疾患を、さらに周産期関連イベント(妊娠高血圧症など)にも拡張し、社会格差を生活習慣因子および免疫機能によって説明できるかを検証していく予定である。
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Remarks |
In Japan, moderate alcohol consumption associated with increased cancer risk https://www.hsph.harvard.edu/news/hsph-in-the-news/japan-moderate-alcohol-cancer-risk/
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Research Products
(7 results)