2019 Fiscal Year Research-status Report
Reserch into the mechanism how coffee prevents colorectal cancer using chemical biology approach
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18K17355
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
渡邉 元樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40723581)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん予防 / ケミカルバイオロジー / カフェ酸 / cyclin D1 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果として、ケミカルバイオロジーの技術を用いて、コーヒー含有成分カフェ酸の、ヒト大腸癌細胞内における新規標的分子として、2種のタンパク質XとYの同定に成功した(XとYに関しては、論文発表後に公表予定)。本年度はこれらXとYが、どのような作用機序で、細胞増殖を制御しているのかについて解析することとした。その解析を効率的かつ網羅的に行うために、Connectivity Map(以下、Cmap)というバイオインフォマティクス解析の手法を導入した。このCmapは、天然物を含む化合物や、遺伝子ノックダウンなど、種々の摂動因子に対して、アレイ解析を行うことで、それら摂動因子と遺伝子発現の相関性を予測するものである。まず、分子XとYにより制御される共通の遺伝子群を抽出するため、解析対象となる全3301遺伝子中、siXとsiY処理により、相関スコアが高い共通の遺伝子群を99遺伝子に絞り込むことができた。さらにそれらに対しエンリッチメント解析を行ったところ、細胞周期(特にG1期)の調節に関与する遺伝子群がエンリッチされた。以上の結果をもとに、カフェ酸処理及びsiX、siY処理後に変動するG1期関連タンパク質について、ウエスタンブロッティングにより探索したところ、cyclin D1がいずれの処理においても、共通に減少することを見出した。引き続き、カフェ酸処理及び分子X、Yが、cyclin D1を制御する機序を詳細に解明するため、補助事業期間を延長し、現在、リアルタイムRT-PCRを用いた解析等が進捗中である。 以上、今年度の研究実績の総括として、大腸癌予防効果が期待されるコーヒーの含有成分であるカフェ酸は、癌細胞内において、分子X及びYに結合し、その機能を阻害することで、cyclin D1の発現を減少させ、細胞増殖抑制効果を示すという、新たながん予防作用機序が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ケモプロテオーム解析により、大腸癌細胞の増殖を制御するカフェ酸の結合タンパク質が、当初の想定を越え、2種類同定されたため、それぞれの分子の機能解析に時間を要することとなった。この点の遅れを解消するために、当初、研究計画には取り入れてなかった、Connectivity Mapというバイオインフォマティクス解析手法を導入することとした。結果、網羅的、効率的に、先の2種類の分子に共通する関連遺伝子群の絞り込みに成功し、現在、計画の遅れを取り戻しつつある。本研究課題で得られた成果のほとんどが、重要かつ新規の知見であり、今後の食品成分によるがん予防研究に大きなインパクトを与えることが期待されるため、1年間の補助事業期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、コーヒー含有成分カフェ酸の新規標的分子XとY(XとYに関しては、論文発表後に公表予定)と、その下流分子として、今年度、同定されたcyclin D1との関連について、生化学的・分子生物学解析及びバイオインフォマティクス解析を進めていき、がん予防の新たな標的となりうるシグナル経路の解明を目指す。一方、当初の研究計画として立案していた大腸ポリープモデルマウス(Apcminマウス)を用いた前臨床試験については、本研究経費内では、完全なる遂行が困難な状況となっているため、現在、複数の民間の研究基金に応募を続けている状況である。
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Causes of Carryover |
ケモプロテオーム解析により、大腸癌細胞の増殖を制御するカフェ酸の結合タンパク質が、当初の想定を越え、2種類同定されたため、それぞれの分子の機能解析に、当初の計画以上の時間を要することとなった。本研究課題で得られた成果のほとんどが、重要かつ新規の知見であり、今後の食品成分によるがん予防研究に大きなインパクトを与えることが期待されるため、引き続き、この2種のカフェ酸標的分子と、その下流分子として、今年度、報告したcyclin D1との関連について、生化学的・分子生物学解析及びバイオインフォマティクス解析を進めていき、がん予防の新たな標的となりうるシグナル経路の解明を目指す予定である。具体的には次年度使用額に関しては、主として遺伝子発現解析のために用いる、消耗品目として、Taqman PCR probeの購入に使用する予定である。
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Remarks |
京都府立医科大学 公式教室研究内容紹介webページ
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Research Products
(1 results)