2018 Fiscal Year Research-status Report
理想的な抗肥満薬の開発に向けたショウガによる褐色脂肪細胞の活性化経路の解明
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18K17361
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
青木 明 名城大学, 薬学部, 助教 (80781963)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / UCP1 / ショウガ / β3アドレナリン受容体 / 3T3-L1 / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界中の先進国では、肥満対策が急務とされている。その中で近年、脂肪の燃焼を担う褐色脂肪細胞(BA)が注目されている。BAは、アドレナリンβ3受容体(β3AR)刺激により活性化するため、β3AR作動薬が抗肥満薬となることが期待される。しかし、β3AR作動薬は心血管リスクを回避できない。つまり、理想的な抗肥満薬の開発には、古典的なβ3AR刺激による経路に代わる新たなBA活性化経路の解明が求められる。そのような背景のもと、申請者は、BA機能を亢進する様々な化合物のスクリーニングを行ってきた。その結果、ショウガ抽出物がBA機能を亢進し、その作用はβ3AR刺激を介していないことが考えられた。そこで本研究は、ショウガによるBA活性化の作用メカニズムを解明することを目的として、β3AR刺激を必要としない新たなBA活性化経路の発見を目的とした。これまで使用してきたショウガ抽出物が製造中止となったこともあり、本年度はショウガ科生薬である生姜、乾姜、良姜の抽出物を作製し、これまでのショウガ抽出物と同じ活性化能があるかを検討した。BA活性化能の評価は、初代培養BA におけるUCP1発現量を指標として検討した。結果、ショウガ抽出物と同様にショウガ科生薬の抽出物にもUCP1発現増加作用が認められ、特に生姜と良姜には強い活性が認められた。HPLCにより生姜と良姜抽出物をそれぞれ分画して、活性成分の探索を行った結果、Gingerol類やShogaol類とは異なる活性成分が存在することが明らかとなった。また、UCP1レポーターアッセイ系の作製を試みた。CRISPR/Cas9システムを用いて、マウス脂肪前駆細胞株3T3-L1の内因性UCP1プロモーター制御下にluciferaseを導入したレポーター細胞株を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市販のショウガ抽出物(現在製造中止)から独自にショウガ科生薬の抽出物を作製することにより、継続的に被験物質を得ることができるようになった。さらに、生姜に加え乾姜と良姜のBA活性を比較検討することで、活性成分の同定が行い易くなった。活性画分もいくつか得られているため、引き続き検討を行っていく。 UCP1レポーターアッセイは、実験毎にレポーター遺伝子を導入する手間がないノックイン細胞株を得ることができた。しかし、現在のところβ3ARアゴニストに反応性を示さないなど今後改善すべき課題もあるため引き続き検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
ショウガ科生薬由来の活性画分を用いて、引き続きBA活性成分の同定を行う。UCP1レポーターアッセイについては、3T3-L1細胞は分化誘導を行うことで多くの受容体や転写因子の発現変動が起こることが知られているため、分化誘導した後にレポーターアッセイを行うなどプロトコールの最適化を行う。さらに、3T3-L1細胞以外の宿主細胞によるアッセイ系の作製も視野に入れて正確に評価できる系の作製を行う。 最終年度に向けて、UCP1発現増加メカニズムを探索するためにクロマチン免疫沈降法や細胞内シグナルの網羅的解析についての予備検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りの使用額であり、おおむね計画通りの使用ができた。次年度はレポーターアッセイの改良が必要であるため、その試薬代として繰り越した額を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)