2018 Fiscal Year Research-status Report
網羅的解析を用いたユビキチン様タンパク質の関わるKSHV溶解感染機構の解明
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18K17362
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
阿部 温子 (杉本温子) 京都薬科大学, 薬学部, ポストドクター (70780774)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / KSHV / ユビキチン様タンパク質 / FAT10 / ウイルス粒子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)はエイズ患者や臓器移植レシピエントにカポジ肉腫を引き起こし、全世界的に数多くの死者を出しているため脅威となっているが、未だ有効な治療薬は存在しない。治療薬開発のためにはKSHVの感染機構を解明することが重要である。 これまでの研究において、関連する宿主因子が同定されていないためにKSHV溶解感染機構が解明されていないという問題を解決すべく網羅的プロテオーム解析を行い、KSHVが溶解感染へ移行する際に発現量の変化する宿主因子を網羅的に探索した。その結果、ユビキチン様タンパク質(UBLs)であるFAT10に関連するタンパク群が顕著に発現増加することを発見した。さらにFAT10について解析した結果、FAT10関連タンパク質のノックアウトにより、KSHVの粒子形成が顕著に低下した。また、超解像度顕微鏡による解析の結果、FAT10関連タンパク質は溶解感染においてゴルジ体に局在することが明らかとなった。ゴルジ体はヘルペスウイルスの粒子形成に関わるといわれている。これらのことからFAT10はKSHVの粒子形成に関わることが考えられる。 次にFAT10が修飾する基質タンパク質を探索するためにFAT10特異抗体またはエピトープタグを用いてプルダウン-質量分析を行った。その結果、基質タンパク質候補として、KSHV粒子形成に関わるウイルスタンパクが複数種類得られた。これらのタンパク質とFAT10の局在を確認したところ、細胞質で共局在していることが明らかとなった。これらの結果を総合すると、KSHVの一部のウイルスタンパク質はFAT10化されることによって粒子形成に有利に働いていることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は今まで解明されていなかったユビキチン様タンパク質がKSHV溶解感染にどの様な影響を及ぼすか解析することでKSHV溶解感染機構の解明を目指すものであるが、本年度はユビキチン様タンパク質の一つであるFAT10がKSHV溶解感染に重要であること、FAT10がKSHVウイルス粒子形成に関与することを示すことができた。さらにFAT10化される基質タンパク質もいくつか同定することができた。ここまで本年度の研究計画の通りであり、予測通りの結果も得られていることから本研究計画は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
FAT10は基質タンパク質を修飾することで、基質をプロテオソーム系で分解することが知られている。本年度得られた基質候補タンパク質について、KSHV溶解感染期におけるタンパク発現プロファイルを作成し、FAT10に修飾されることにより分解に回るのか、確認を行う。併せて免疫沈降法を用いて、今回得られた基質候補タンパク質が直接FAT10と結合するのか、修飾部位はどこか解析を行う。また、本年度得られた基質候補タンパク質はウイルス由来タンパク質であるので、BAC法を用いて候補ウイルスタンパク質のFAT10修飾部位に変異を入れた組換えウイルスを作製し、KSHVウイルス粒子形成に影響を与えるか確認を行う。 さらに研究の準備段階で得られたデータでFAT10以外のユビキチン様タンパク質もKSHV溶解感染に影響を与えることが示唆されていたが、それらのユビキチン様タンパク質についても今回と同様に解析を行うことで、ユビキチン様タンパク質がKSHV治療薬の有用な薬剤ターゲットっとなりうることを示していきたいと思っている。
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Causes of Carryover |
本年度は研究計画に沿って研究費を執行していたが、1円使い切ることができなかった。
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