The mechanisms of arsenic-induced carcinogenesis via fibroblast senescence

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K17363
• Research Institution: National Institute for Environmental Studies
• Principal Investigator: 岡村 和幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 研究員 (50736064)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: ヒ素 / 有機ヒ素 / 細胞老化 / SASP / 発がん

Outline of Annual Research Achievements

今年度はまずⅢ価の有機ヒ素化合物であるmonomethylarsonic diglutathione (MADG)とdimethylarsinic glutathione (DMAG)の調製に取り組んだ。5価のメチルアルソン酸とグルタチオンをモル比1:4で、5価のジメチルアルシン酸とグルタチオンをモル比1:3でそれぞれ窒素置換を行った超純水中でovernight反応させることでMADGおよびDMAGを得た。調製したMADGおよびDMAGの濃度測定をICP-MS, 化学形態の分析をHPLC-ICP-MSを用いて行った。
次に肝臓の線維芽細胞である星細胞の細胞株へ無機ヒ素曝露を行い、細胞老化が誘導されるか検討した。まず、ヒト由来の星細胞細胞株LX-2およびマウス由来の星細胞細胞株GRXを用いて無機ヒ素曝露によって細胞増殖が抑制されるか検討を行った。その結果、対照群と比較してLX-2細胞において1 μMの曝露から、GRX細胞において10 μMの曝露から有意に細胞増殖が抑制された。次に、特にLX-2細胞に着目し、72時間無機ヒ素曝露によって細胞老化マーカーの遺伝子発現量が変化するか検討を行った。その結果、対照群と比較してLAMINB1の遺伝子発現量の低下およびP21の遺伝子発現量の増加が観察された。さらに、senescence-associated secretory phenotype (SASP)のひとつであるIL-8の遺伝子発現量を検討したところ、ヒ素曝露によって有意な増加が認められた。以上の結果から、無機ヒ素曝露によってヒト肝星細胞において細胞老化マーカーの遺伝子発現が変動し、細胞老化誘導に伴うSASP因子の産生が亢進されていることが示唆された。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

予期せぬ測定に用いる機械の故障や、試薬の不良により実験が出来ない時期があり、進捗がやや遅れた。

Strategy for Future Research Activity

今年度調製したⅢ価およびⅤ価の有機ヒ素化合物を用いて今年度と同様の実験を行う。また、ヒ素曝露によって細胞老化が誘導されているか否かをさらに検討するために、培地からヒ素を除いた後の細胞増殖等の実験を行う。また、細胞老化を誘導した細胞を培養している培地の上清をとり、上皮細胞へ曝露し、細胞増殖への影響を検討する。さらに皮膚の細胞に関しても同様の機序が見られるか検討を行う。