2018 Fiscal Year Research-status Report
アセトアミノフェン中毒の病態形成における樹状細胞の役割解析と法医診断学への応用
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18K17418
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山本 寛記 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30781265)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法医学 / アセトアミノフェン / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
解熱鎮痛剤として汎用されているアセトアミノフェン(APAP)は,肝臓特異的に障害を起こすことが知られており,容易に入手できることから自殺や偶発的な事故など,法医実務においてしばしば中毒事例と遭遇する.本研究では,炎症の制御あるいは増幅に関わる樹状細胞の中でも,特に細胞障害性T細胞を誘導する活性が強いXCR1陽性樹状細胞(XCR1+DC)に注目し,マウスを用いた実験によりAPAP肝障害におけるXCR1+DCの態様,マクロファージ(クッパー細胞)の動態,APAP代謝動態,炎症性サイトカインの発現動態との関連性を解析することを目的として実験を行った. マウスはXCR1遺伝子欠損およびXCL1遺伝子欠損マウスと,コントロールとして野生型(C57BL/6)マウスを使用し,APAPを600 mg/kg投与後,経時的(10,24時間)に各マウスから採取した血液を血清分離し,血清中逸脱酵素(ALT, AST)の測定を行い,肝障害の程度を生化学的に解析した.その結果,野生型マウスと比較してXCR1遺伝子欠損マウスでALT,AST上昇の増加が見られた.さらに投与後10時間及び24時間に採取した肝臓組織から作成したパラフィン包埋切片をHE染色し,形態学的変化を観察したところ,野生型マウスと比較してXCR1遺伝子欠損マウスで,肝障害の増悪が見られたことから,APAP肝障害におけるXCL1-XCR1シグナルの関与が示唆された. 野生型マウスにAPAPを投与後,経時的(10,24時間)に採取した肝組織により,total RNAを抽出し,逆転写によりcDNAを合成,real time RT-PCRを行い,各時間におけるXCL1およびXCR1のmRNAを定量した結果,XCL1は24時間まで増加していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り進展しているため
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,免疫染色やウエスタンブロットを行い,また蛍光二重染色によるXCL1発現細胞の確認も行うことで,さらに詳しいAPAP肝障害におけるXCR1陽性樹状細胞の動態及び分子メカニズムの解明を目指すとともに,APAP投与後の各遺伝子欠損マウスにおける炎症性サイトカインの遺伝子発現検討を行う.さらに実際の法医解剖においてAPAPやその他薬物中毒と判断された事例において,血液や各臓器を採取し,各XCR1の動態をたんぱく質及び遺伝子レベルで検索を行う.それらの検索結果は,動物実験モデルを用いた結果と比較検討し,XCR1発現動態がAPAP中毒診断に応用可能か否かについて検討する.
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