2018 Fiscal Year Research-status Report
A diagnostic approach for lethal cardiac hypertrophy based on the analysis of autophagy-lysosomal pathway
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18K17419
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
垣本 由布 東海大学, 医学部, 講師 (40734166)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リポフスチン / 加齢 / 心臓 / 心臓性突然死 / オートファジー / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、細胞内クリアランス機構の指標のひとつであるリポフスチン(LF)に注目した。LFは、細胞内で分解されなかった酸化物が主としてリソソーム内に凝集したものであり、加齢や変性疾患で増加することが広く知られている。しかし、不均一な凝集体であるため特定の抗体を持たず、法医診断的活用を目的とした定量解析には検討の余地があった。本研究では、心筋LFの自家蛍光を定量することで、加齢、心筋虚血、心機能、栄養状態、またオートファジー/リソソーム系の活性との関係を考察した。 症例として、20~97才、76例の法医解剖検体を用いた。ホルマリン固定した心臓未染組織切片を、蛍光顕微鏡Axio Imager M2 microscopeで撮影し、画像解析ソフトFiji 1.52eにてLF自家蛍光域と心筋面積を計測した。各症例10視野(対物20倍率)の平均からLF沈着率を算出した。また、凍結組織を用いて、オートファゴソームマーカーであるLC3とオートファジー基質であるp62のウェスタンブロッティングを行った。 その結果、外因死例では、心筋のLF沈着率は年齢と強い相関を示し(r=0.820)、高齢者では個人差が大きかった。一方、BMI、BNP濃度、心重量、死因、LC3、p62との有意な相関は認めなかった。ただし、癌患者ではLF高度沈着例を一部認めた。 心筋のLF定量は、通常の組織学検査と並行して行うことができ、身元不明者の年齢推定に有用である。一方、虚血性心不全を含めた心臓性突然死の診断マーカーとしては価値がなかった。LFの産生機序としては、オートファジー/リソソーム系全般の機能不全よりも、劣化ミトコンドリアを選択的に分解するマイトファジーの機能低下に起因する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトの心臓において、加齢と高い相関をもってリポフスチンが沈着することが確認され、法医学実務でも利用できる年齢推定式を示すことができた。 また、従来オートファジー/リソソーム系の一指標とみなされてきたリポフスチンが、オートファジー/リソソーム系の全般的な機能不全に直結しないことが明らかになった。オートファジー/リソソーム系における基質特異的な機能障害について検討する方向性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
リポフスチンの発生機序については、劣化ミトコンドリアの分解(マイトファジー)不全が関与していないか検討する。 また、オートファジー/リソソーム系全般ではなく、本経路中の何らかの選択的な分解能不全が心臓性突然死に寄与するとの仮説のもと、リソソームの蛋白分解酵素カテプシン各種の活性を測定する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたシステム生物顕微鏡の新規購入を取りやめ、既存の顕微鏡のLED光源への切り換えおよび撮影システムのアップデートを行ったため差額が発生した。 次年度は、オートファジー/リソソーム系の標的分子が増えたため、ウエスタンブロッティング用試薬および免疫染色試薬の購入費に当てる。
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