2019 Fiscal Year Research-status Report
移行期における慢性期の精神疾患を抱える人々が経験するケアに関する現象学的研究
Project/Area Number |
18K17497
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
石田 絵美子 神戸市看護大学, 看護学部, 助教 (50759058)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性期の精神疾患 / 患者 / 看護師 / 精神科病院 / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、慢性期の精神疾患を抱える人々が、各々の生活場所である病院や地域において、看護ケアを如何に経験しているのかを明らかにする。そして、そのような看護ケアを受ける経験が、彼らの日常生活を如何に成り立たせているのかを記述的に探究することを目的としている。 2018年度は、精神科病院の療養病棟におけるフィールド調査と患者および看護師へのインタビュー調査を実施した。主に、看護師の経験に関するデータ分析をすすめ、看護師のかかわりを通じて、患者が如何に回復していったのかを明らかにした。2019年度は、2018年度の調査で得られた患者の経験に関するデータ分析を行った。妄想を抱え長期間病院に入院している患者たちの現在の生活は、入院当初、副作用の強い薬を服用しなければならなかったことなどの辛い治療経験や入院前の仕事をしながら学校に通っていた大変な時代の経験などの様々な過去の経験から成り立っていることが明らかとなった。患者たちは、そのような遠い過去の辛い経験でさえも現在に至っても把持することにより、入院生活を受け入れ、慣れていったことが明らかとなった。また、今年度得られた患者のデータは現在分析中であるが、現段階では、入退院を繰り返してきた患者が、現実と妄想を行き来しながらもその人らしさを失わずに入院生活を送っている経験が明らかとなった。こうした分析結果を踏まえて、精神科病院における看護支援の在り方を考える際に、患者視点に立脚することの重要性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画でに従い、2018年度は、精神科病院の療養病棟でのフィールド調査と患者および看護師へのインタビュー調査を実施し、主に看護師の経験に関するデータ分析を行った。2019年度は、2018年度と同じ研究参加者へのインタビュー調査を継続して実施すると同時に、新たな病棟でもフィールド調査と患者や看護師へのインタビュー調査を実施し、そのうえで、フィールドノートや録音データのトランスクリプトを作成し、適宜分析をおこなった。研究実績の概要に記載した通り、こうした研究の進捗状況を総じてみると、本研究は、当初の研究計画にそって、おおむね達成されていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①今年度は、地域での調査に着手するために、昨年度末に予定していたものの実施てできなかった調査依頼や事前打ち合わせを行い、事前調査を経てデータ収集を実施していく。具体的には、これまで調査依頼をしてきた病院のグループホームに居住している、あるいはデイケアへ通う精神疾患を持つ人々の生活状況を参加観察して、インタビューを実施していきたいと考えている。さらに、彼らを取り巻く様々な支援者、例えば、精神保健福祉士や訪問看護師、グループホームの世話人やデイケアのスタッフなどにもインタビューを実施して、多様な視点から精神疾患を抱える人々の生活を詳細に分析していきたいと考えている。 ②2019年度に実施した精神科病棟で得られたデータの分析を継続する。その分析によって生じた疑問等にそって、引き続き、前年度に依頼した同じ研究参加者に対するインタビュー調査も実施していく。そのことにより、患者たちの入院生活をより詳細により深く分析していくことが可能になると考える。 ③今年度の地域での調査、および、これまでの病棟での調査の状況を鑑み、本研究の最終年度になる次年度の調査について考え、その調査依頼や打ち合わせ、事前調査等の準備をしていく。
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Causes of Carryover |
昨年度は新型肺炎の流行により、年度末に予定していた調査と別の新規調査のための打ち合わせ等が実施できなかった。今年度は、昨年度に予定していた調査にかかわる諸費(打ち合わせやインタビューのための交通費、テープ起こしの依頼費など)の支出を予定している。さらに当初から今年度に予定していた調査のためのテープ起こし代や交通費、謝金、その他にもデータ記録のためのテープレコーダー、データ分析のためのパソコンと印刷機の購入、学会参加などにかかる支出も予定している。
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