2020 Fiscal Year Research-status Report
複雑性PTSDに関連する「むずかしい患者」と看護師の共感疲労に関する基礎的研究
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18K17544
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
白柿 綾 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 講師 (00331760)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | むずかしい患者 / 愛着の障害 / 複雑性PTSD / 共感疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、日本の病院において治療困難で入院が遷延している「むずかしい患者」について、その実態と患者をとりまく状況、看護師の心理的ストレスに関する状況を明らかにし、「むずかしい患者」をケアする看護師への支援について新たなアプローチを明らかにすることを目的としている。 2年目以降の計画は、「むずかしい患者」をとりまく諸相と看護師の共感疲労の様相を記述して明らかにし、看護師のサポートのあり方に関して考察し、看護師への支援について新たなアプローチを構築することである。一昨年度に開催した「教育セミナー」および「グループディスカッション」において、「むずかしい患者」をケアした経験に基づく葛藤やストレスを抱える看護師が実在することは明らかになっており、より深くそれらの体験および現在の看護への影響などを聞き取り調査していく計画であった。しかし、インタビュー調査の準備を進めていたところ、Covid-19感染拡大により一時進行を中断することとなった。 そのために、研究計画のデータ収集期間を変更し、インタビュー調査を次年度へ持ち越すこととして、昨年度はこれまでに行った文献検討のまとめを行った。文献検討から国内外の「むずかしい患者」の実態を概観した。結果、看護師がケアする上で「むずかしい患者」と感じるその要因に、患者の成育史上のトラウマが生み出す愛着の障害があることが明らかとなった。その結果をもとに、「複雑性PTSD」や「愛着の障害」などの診断概念から導き出された「むずかしい患者」特有の困難さについて、不安定な愛着パターンによる甘えと攻撃性の入り混じる対人関係が看護師の感情を疲弊させてしまうと論じた。 今後は、「むずかしい患者」のケアを経験した看護師にインタビュー調査を実施し、看護師の共感疲労の諸相と「むずかしい患者」をとりまく状況を明らかにして、看護師へのサポート体制について示唆を得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画2年目に予定していた「むずかしい患者」をケアした看護師へのインタビュー調査の準備段階で、Covid-19感染拡大による影響で、進行を一時中断した。インタビュー調査の同意は得られているものの、倫理審査で承認を得たデータ収集期間を過ぎたため、改めてデータ収集期間を延長修正し、倫理審査の承認を得るところまで作業を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
感染状況に注意を払い、8月までに早急に同意を得ている看護師へのインタビュー調査を実施し、その後9月中に「むずかしい患者」が存在するフィールドでのフィールドワークを通して、「むずかしい患者」の実態を明らかにしする。 そのうえで、「むずかしい患者」の実態とケアする看護師の共感疲労の諸相を描き出し、看護師へのサポート体制や「むずかしい患者」の看護に対する示唆を年内にまとめる。
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Causes of Carryover |
Covid-19感染拡大の影響で、インタビュー調査が中断したためデータ収集用の経費、およびフィールドワークの経費が残額となった。次年度に繰り越し、面接調査及びフィールドワーク再開に応じて、必要な物品を購入していく計画である。
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