2023 Fiscal Year Annual Research Report
A basic study of empathy fatigue in nurses with 'difficult patients' related to complex PTSD.
Project/Area Number |
18K17544
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
白柿 綾 聖カタリナ大学, 看護学部, 准教授 (00331760)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | むずかしい患者 / 看護 / 共感疲労 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の病院で入院している治療困難な「むずかしい患者」の看護の経験について、対面によるインタビューを進め、研究全体を通して12名のナース(一般診療科5名、精神科7名)の看護の経験についてデータを収集することができた。さらに文献検討を進めながらインタビューの分析を進めた。 その結果、治療困難な「むずかしい患者」の要因は、患者個人の要因だけではなく、医療者側の「コミュニケーションスキル」や「状況判断力」、「治療的な対応力」といった医療者側の要因と、急性期化や機能分化が進む医療の社会状況も関連していることが明らかとなった。 インタビューデータの分析では、「むずかしい患者」の実態として①脅しや激しい怒りを向けてくる患者、②治療や処置、ケアに非協力的な患者、③操作的行動や過度な要求を求めてくる患者、④暴力をふるう患者、⑤強い不信感などつながりを感じられない患者、について看護師たちは「むずかしい患者」だと捉えていた。そして、そのような患者の看護を行う中で、看護師たちは「無力感」や「恐怖」、「惨めさ」、「虚無感」、「不条理感」など強烈な心理的ストレスや共感疲労を経験し、さらに生活上の警戒を続けることやフラッシュバックなど身体上にも大きな影響をおよぼしていた。 一方で、そのような「むずかしい患者」をとりまく背景には、急性期化が進む医療の中で「じっくり話を聴く時間がない」、「次に顔を合わせることがない」といった医療者と患者が関わる機会が制限されることや、簡潔な対応が求められるなど患者ー看護師関係が制限されるといった状況の深刻さ浮かび上がってきた。 そして「むずかしい患者」をケアする看護師へのサポートとしては、強烈な感情をを緩和し、患者の難しさを外在化して振り返るスキルや機会の確保と「むずかしい患者」の生物・心理・社会的要因を包括的にとらえてアセスメントする方策が必要になると示唆された。
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