2020 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災自治体の地域見守り訪問活動の効果と効果的活動に必要な要素の明確化
Project/Area Number |
18K17598
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松永 篤志 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70781730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域見守り活動 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1 【背景】東日本大震災の被災地では発災以降、高齢者見守り活動は変化しており、活動の効果にも影響している可能性があるため、その変化の変遷を調査した。【方法】宮城県の1自治体で、史料の収集と見守り活動従事者12名に対しインタビューを実施した。【結果】住民の気付き合いによる見守り活動は、居住環境・住民の親密度・住民の自発性の三つが関連していた。仮設住宅期には、お茶会等を通して顔見知りになることで、自然と互いに声をかけ合い見守りをし合う関係となり、住民の親密度が増すという好循環があった。その一方で、行政が被災者支援総合交付金等を活用して支援員等を雇用して見守り活動を行ったことで、地域の見守り活動は支援員に任せれば良いという意識となり、住民組織が自主的に行うことがなかった。【考察】公的な見守り活動が、住民の自主的な見守り活動を阻害する可能性がある。
研究2 【背景】地域見守り活動の実施の効果として、危機的な出来事から回復しようとする集団の能力および機能であるcommunity resilienceを高める可能性が考えられた。そのため、地域のcommunity resilienceのアセスメントツールに関する文献検討を行った。【方法】文献検索等から、56のアセスメントツールを抽出し、被引用件数が多いもの8つを整理した。【結果】各ツールの下位概念は社会的側面と経済的側面に関するものは共通していたが,その他の下位概念はツールごとに様々であった。また,Healthの分野で引用される比率が高かったのは、Norrisのモデル(Norris, et al., 2008)を参考にしたツールだった。【考察】community resilienceは、まだ一定のコンセンサスが得られた定義やアセスメント方法がない状況であり、地域見守り活動の効果の実証に用いられる段階の概念ではないと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では被災自治体に赴き、グループインタビュー、個別インタビューを行うことを計画したが、新型コロナウイルス感染症の流行のため、移動が制限されたこと、長時間の対面でのインタビューに感染のリスクがあることから研究を思う様に進められていない。オンライン会議システムの導入も試みたが、インタビュー対象者には高齢者も多く、上手くできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進める中で、「効果」とは何かについて検討する必要が出てきた。効果は辞書的には望ましい結果とされる。本研究について考えた時、その望ましいとは誰にとって望ましいことなのかについての検討である。望ましさの基準は、先行文献からは、見守りの対象者個人にとってというものと、活動を実施している地域にとってというものが考えられる。これまで、見守り活動の効果の具体を集めそれを分類することにより、解決できると考えていたが、望ましさの基準が明確でないが故に、何が効果の具体なのか判断できなかった。そのため、今後早急に、本研究における「効果」を検討する。 加えて、今年度、インタビューを実施せずにデータ収集を行う方法を検討したが、アンケートを行うための項目を作成するためのインタビュー調査でありアンケート調査で代替することができないこと、文献検討も試みたが具体の情報が少ないことから、インタビューの実施が望ましいという結論となった。新型コロナウイルス感染症の流行が収束する兆しは見えないが、引き続きインタビューが行えるように工夫していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行でインタビューが十分に実施できていないこと、移動の制限のため研究フィールドへの出張が実施できなかったこと、学会もオンライン開催となったため次年度使用額が生じた。次年度、インタービュー調査等の実施を調整し、実施する予定である。
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