2021 Fiscal Year Research-status Report
新卒訪問看護師育成に向けた看護学生のキャリア教育プログラムの開発
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18K17607
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
千葉 洋子 宮城大学, 看護学群, 助教 (70757856)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新卒訪問看護師 / 育成 / 生活 / 生活者 / 判断 / 要介護高齢者 / 看護学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
新卒訪問看護師が「要介護高齢者を『生活者』として捉える力」を獲得するプロセスを明らかにすることを目的として、2021年4月から11月にかけて、経験年数1年以上5年未満の新卒訪問看護師を対象に5例のインタビュー調査を実施した。12月以降は2020年度に収集した4例のデータと統合を図りながら分析を行った。なお、データ分析では、逐語録を繰り返し読みながら、要介護高齢者を「生活者」として捉える力の変遷と、力の獲得方法について語られている記述の文脈を意味の読み取れる単位ごとにコード化し、抽出したコードの相違点、共通点について比較しながら分類し、サブカテゴリ、カテゴリを生成した。その結果、入職1~2年間における新卒訪問看護師の生活と医療を統合して看護を創造する力の変遷について明らかにすることができた。 新卒訪問看護師の成長プロセスについては、研究蓄積が乏しく、看護学生がキャリアを選択する際に不安を抱く一要因であると指摘されている。2021年度の研究取り組みにおいて、新卒訪問看護師の生活を医療を統合して看護を創造する力の変遷について明らかにしたことは、新卒訪問看護師の成長プロセスの一側面を明らかにすることにつながり、将来的には、看護学生が新卒訪問看護師を展望する一助になりうると考える。 しかしながら、2021年度は力の変遷を明らかにするのに留まり、新卒訪問看護師がその力をどのように獲得したかについては明らかにできていないため、2022年度は新卒訪問看護師の学習行動に焦点を当てて、さらにデータ分析を重ねていくことする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
看護学生が自己のキャリアを展望した上で、病院に限らず新卒訪問看護師も選択肢に含められる体系的なキャリア教育プログラムを開発することを最終目的として本研究を計画した。しかしながら、キャリア選択には実習での経験が深く関与している為、キャリアや進路を選択する一側面のみに焦点を当てると、実態に即さない教育プログラムになる危険性があると判断し、再度文献検討を行った。その結果、新卒者が訪問看護師としてキャリアをスタートする意義や訪問看護師としての成長に関する研究蓄積が乏しいことが明確となり、現段階では学生を対象とするキャリア教育プログラムの開発は難しいとの見解に至った。 一方、訪問看護師の判断の基盤として、療養者を「生活者」として捉える力があるが、新卒訪問看護師がその力を獲得するプロセスは明らかになっていないことが明確となり、そのプロセスを明らかにすることは、新卒訪問看護師の教育プログラム開発に寄与するだけでなく、学生が新卒訪問看護師としてのキャリアを展望する一助となりうると考えた。そこで、新卒訪問看護師が「要介護高齢者を『生活者』として捉える力」を獲得するプロセスを明らかにすることを目的とした研究計画書を2019年度に立案し、宮城大学研究倫理専門委員会の承認を得た。 2020年度はCOVID-19感染拡大の影響により全国への移動が制限され、データ収集の進捗が滞った。オンラインでのデータ収集に変更し、4例のインタビュー調査とデータ分析が可能となったが、研究倫理変更審査を受けて承認を得る、オンラインでのインタビューが可能な環境を整える等、当初の計画には含まれない準備期間を要した。 上記の理由により、研究は大幅に遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画を変更し、新卒訪問看護師が「要介護高齢者を『生活者』として捉える力」を獲得するプロセスに焦点を当てて研究を遂行する。なお、本研究において「生活者として捉える力」とは、「日々の訪問看護実践における、利用者および家族の観察や推察、意思の確認を通して、固有の生活習慣、生活リズム、価値観、人生観、家族関係、介護力、経済状況、社会資源サービスの利用状況を把握し、病状や身体状況と照らし合わせて利用者および家族の意思に即したケアを創造する力」と定義する。 2022年度は新卒訪問看護師の学習行動に焦点を当ててデータを分析し、2021年度に得られた結果と統合することで、新卒訪問看護師が療養者を「生活者」として捉える力を獲得するプロセスを明らかにし、研究第一段階を完了させる。また、研究第二段階として教育プログラムを試作し、表面妥当性の検証を行う。具体的には、新卒訪問看護師と育成者に教育プログラムの内容と運用方法を伝え、オンラインでのフォーカスグループインタビューを実施する。以上の結果を基に、看護学生が新卒訪問看護師としてキャリアを展望する際の課題と対応策について考察する計画である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、看護学生が自己のキャリアを展望した上で、病院に限らず、新卒訪問看護師も選択肢に含められる体系的なキャリア教育プログラムを開発することを最終目的としていた。しかしながら、看護学生のキャリア選択には実習での経験が深く関与しているため、キャリアや進路を選択する一側面のみに焦点を当てると実態に即さない教育プログラムになる危険性があると判断し、研究計画の再考を行った。また、COVID-19感染拡大の影響により、データ収集が滞った期間が発生した。以上2点により、研究の進捗が当初の計画よりも大幅に遅れ、これに伴い次年度使用額が生じた。 加えて、データ収集をオンラインに変更したことで、当初の計画よりも旅費が大幅に削減されたことも一因と考えられる。 2022年度は考察に用いる文献の購入費または複写費、研究第二段階のデータ収集に伴い発生する通信料や謝金および逐語録作成委託費、メンバーチェッキング等に要する費用の執行を予定している。
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