2019 Fiscal Year Research-status Report
褥瘡予防ケアのための「外力と骨突起の相対的位置関係」を反映する物理的モデルの構築
Project/Area Number |
18K17624
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
高橋 佳子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 研究生 (70782027)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 褥瘡 / 外力と骨突起の相互関係 / 褥瘡モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、褥瘡発症と悪化の原因である外力がどのような機序で組織障害に至るのかを検証するために物理学的な褥瘡発症―ケアモデルの構築を目指している。褥瘡治療・ケアにおいて深い褥瘡にみられるポケットは大きな問題であるがポケットを有する褥瘡へ外力がどのように影響を与えているかは不明である。令和元年度は、平成30年度に作成した褥瘡モデルを使用し分析をすすめた。 褥瘡ポケットモデルのコンピュータシミュレーションによる皮膚内部ひずみの解析から、褥瘡発生および褥瘡ポケット悪化過程における外力の影響について明らかにするために、「褥瘡ポケット辺縁の非接触ひずみ測定法の確立」および「褥瘡ポケットモデルを用いた有限要素解析による内部ひずみ分布」について検討を行った。 「褥瘡ポケット辺縁の非接触ひずみ測定法の確立」では、デジタル画像相関法を用いて、褥瘡ポケットモデルに表面から外力を与えた時の表面の変形からひずみ量を評価した。測定に用いた褥瘡ポケットモデルは,ポケット内部の一部にオーバーハング型のポケット形成があるもので、オーバーハング部にせん断ひずみが集中しており、さらに、最大せん断ひずみはポケット最深部で発生していたことが観察された。 「褥瘡ポケット辺縁の非接触ひずみ測定法の確立」では、褥瘡ポケットモデルから、シミュレーションモデルを作成し、変形過程における内部ひずみ分布を測定した。ポケット内部のオーバーハングと骨突出による影響を調べた。本モデルでは、骨突出による影響はほとんど見られなかった。このことはポケット辺縁の変形におよぼす荷重は表面からの外力に比して、骨突出部による反力(応力)が小さいことによるものと推測された。 令和2年度は褥瘡ポケットモデルを用いた実験をすすめるとともに、診療記録からポケットを有する褥瘡のデータ分析をすすめ、これらを統合し褥瘡を有する患者のケア方法を検討していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度では、ポケットを有する褥瘡の臨床的観察とコンピュータシミュレーションによる皮膚内部ひずみの解析から、褥瘡発生および褥瘡ポケット悪化過程における外力の影響について明らかにするために、以下の2項目について検討を行った。 「褥瘡ポケット辺縁の非接触ひずみ測定法の確立」では、2つの画像から表面形状を読み取り、その差分からひずみ状態を解析するデジタル画像相関法は、外力による変形を可視化する簡便な方法であり臨床での測定に適したものであると考えられる。本年度は褥瘡ポケットモデルに表面から外力を与え、表面の変形からひずみ量を評価した。測定に用いた褥瘡ポケットモデルは、ポケット内部の一部にオーバーハング型のポケット形成があるもので、オーバーハング部にせん断ひずみが集中しているのがみられた。また、最大せん断ひずみはオーバーハング最深部で発生しており、このことから、オーバーハングの成長が異方性をもつ可能性を示唆できた。 「褥瘡ポケットモデルを用いた有限要素解析による内部ひずみ分布」では、褥瘡ポケットモデルから、シミュレーションモデルを作成し、変形過程における内部ひずみ分布を測定した。ポケット内部のオーバーハングと骨突出による影響を調べた。本モデルでは、骨突出による影響はほとんど見られなかった。このことはポケット辺縁の変形におよぼす荷重は表面からの外力に比して、骨突出部による反力(応力)が小さいことによるものと推測される。 令和2年度は、ベッド上で褥瘡モデルとマトレスの干渉を体重相当荷重下における表面変形計測と、得られた初期条件からシミュレーションによる内部応力分布から褥瘡ポケットの悪化過程を明らかにする予定である。 令和元年度では、平成30年度に作成した褥瘡ポケットモデルを用いて、ポケット部への外力の影響について実験をすすめることが出来ており、前進していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、ポケットを有する褥瘡に焦点をあて、ポケット部位における外力の影響について実験を行った。また、診療記録からポケットを有する褥瘡画像データの分析をすすめている。 令和2年度では、褥瘡ポケットモデルを用いた実験について、ベッド上にて褥瘡モデルとマトレスの干渉を体重相当荷重下における表面変形計測と、得られた初期条件からシミュレーションによる内部応力分布から褥瘡ポケットの成長過程を明らかにする予定である。また、褥瘡の診療記録からは、褥瘡内部の肉芽組織画像の詳細な観察と分析をすすめていく予定である。これらの結果を統合し検討することによって、臨床における褥瘡を有する患者への看護ケアの実践や教育の利用に繋げることができると考えられる。
|
Causes of Carryover |
本研究計画書では、当初、ブタ皮膚の組織染色等をおこなう予定であったが、ポケット内部への外力の影響を明らかにするために非生体材料(ウレタンフォーム)を用いた褥瘡ポケットモデルを用いた実験へと変更した。そのため、組織染色等のために予定していた人件費を使用しなかった。また、3月に予定していた学会の中止により旅費の使用がなくなり、次年度使用額が生じることとなった。 令和2年度使用予定分となった費用については、実験に使用するために必要となる褥瘡ポケットモデルの追加購入やファントムの購入に使用する予定である。
|