2018 Fiscal Year Research-status Report
長期経年政府統計データを用いた3種類の健康寿命に関連する要因の探索と比較
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18K17637
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
平 和也 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70804847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 健康寿命 / 延伸 / 要因 / 主観的健康感 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の自治体が政策目標として掲げる3種類の健康寿命の相関分析による比較とその延伸にかかる要因をe-Stat(政府統計の総合窓口)に掲載されている政府統計データを用いて関連性を評価した。3種類の健康寿命のうち、主観的な健康寿命(質問紙による本人の回答によって健康を定義)と客観的な健康寿命(介護保険制度に基づく要介護認定をもとに健康を定義)が傾向の異なる指標である可能性が高いことが分かった。関連する要因については、各種類の健康寿命によって有意な関連のある要因の個数や内容が異なっていた。特徴として、客観的な健康寿命が主観的な健康寿命と比較して有意な関連要因が多く、男性では、旅行行動者割合やインターネットの利用率、高学歴や高収入であることが関連し、女性の場合はボランティア活動が多く関連しているということが分かった。これらの内容については、第77回日本公衆衛生学会で口頭発表を行い、論文をPalgrave Communicationsに投稿中である。 また、主観的な健康寿命と客観的な健康寿命の順位に乖離がある滋賀県において、主観的な健康の概念やその決定要因を明らかにするためのインタビュー調査を実施した(別途、受託研究費あり)。結果として、年代や性別で異なる傾向が確認された。すなわち、男性は健診等の数値データを重要視し、自分中心であること、女性は、家事や育児といった役割を果たせているかを重要視し、他者との関係性の中で健康を評価しているといった傾向が認められた。客観的な健康寿命算出は、介護保険制度の特性上、65歳以上の対象者が中心となるが、主観的な健康寿命算出に当たっては、子育て世代や働き盛り世代の影響が大きい可能性も示唆された。本インタビュー結果についても、質的な分析を行い、ジャーナル(BMC Public Health予定)に投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の計画では、健康寿命延伸にかかる要因を抽出し、2019年度に実施予定の無記名自記式質問紙調査を行う際の基礎資料を作成する計画であった。『研究実績の概要』に記載した内容のとおり、政府統計を用いた要因の探索的な分析を行い、関連する可能性がある要因を抽出できた。また、政府統計の分析で関連要因が多く認められたのは客観的な健康寿命であったが、主観的な健康寿命についても、一般市民にインタビュー調査を行い、構成概念やその決定因子などについて質的な検討も行った。 現在、先行研究で明らかになっていること等も踏まえながら、具体的な調査票の作成や調査計画を作成する段階に入っており、おおむね計画通りに研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、無記名自記式質問紙調査を実施する予定としており、現在計画を立てている。本調査は、都道府県が策定している健康増進計画で目標値として設定されている割合の高い『主観的な健康寿命』を延伸する要因を明らかにすることを目的とする。対象者は、主観的な健康寿命の長い政令市(浜松市を想定)と短い政令市(大阪市または堺市を想定)の住民基本台帳からで無作為抽出された者とする。調査項目は、2018年度に実施した政府統計の分析やインタビュー調査で抽出された要因とし、主観的な健康寿命の長い都市と短い都市を推測する因子について分析を行う。 また、健康寿命自体は、大規模な都市や都道府県単位で算出されるものであるが、本調査は個人に対して回答を求めるものであるため、QOL尺度等を調査項目に入れることで、健康寿命の長い都市に住む人の健康感を個人レベルで測れる指標がないかも検討する。 都市や都道府県レベルでしか算出できなかった健康寿命では、延伸にかかる要因分析をするにあたり、サンプルサイズ(N=47:都道府県数)の問題で、多変量解析をすることが困難であったが、個人レベルで計測できるものがあれば、より精緻な分析が可能になり、効果的な健康寿命延伸にかかる政策を考えるための示唆をえられる可能性がある。 2019年度は、調査票の送付・回収、データ入力、データクリーニング、分析までを中心に行い、分析結果を精査したうえで、2020年度には学会発表や論文のジャーナル投稿をする計画である。
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Causes of Carryover |
現在投稿中の論文の論文掲載料(APC)として、予算確保をしていたが、査読者が見つからない等の理由でジャーナル変更を行い、2018年度中にアクセプトされなかったため。2019年度に掲載が決定し次第、支出予定。
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Research Products
(2 results)