2018 Fiscal Year Research-status Report
在宅認知症高齢者の家族介護者に対する認知行動療法プログラムの開発と検証
Project/Area Number |
18K17650
|
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
齋藤 嘉宏 国際医療福祉大学, 福岡看護学部, 助教 (90807413)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 認知行動療法 / 認知症 / 家族介護者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、在宅認知症高齢者の家族介護者に対する認知行動療法プログラムの開発と男性介護者に対する有用性の検証である。我が国では、認知症者数の増加が顕著であり、在宅医療・介護が推進される中で家族介護者の介護負担感の増加が明らかになっている。また、近年では男性介護者から要介護者への虐待も大きな社会問題となっており、虐待をする家族介護者はうつなどの精神的な問題を抱えていると言われている。本プログラムを開発・検証することで、我が国の認知症家族介護者の介護負担感などの心理的ストレッサーを軽減させ、うつの予防に繋がる可能性を示唆出来れば、今後の男性介護者に対する実践的介入方法としても提案出来るのではないかと考えた。 研究開始初年度(2018年)は、第一に認知症家族介護者への認知行動療法の効果について明らかにした海外文献レビュー(システマティックレビュー)を行った。文献レビューの結果は論文化し、現在査読修正を重ねている段階である。第二に、①文献レビューの結果、②既存の認知行動療法プログラムなどをもとに、精神科看護の専門家からスーパーバイズを受け、電話を用いた認知行動療法プログラムの開発を行った。プログラムは、講義(認知症の概要、介護者の介護負担感・ストレス・抑うつ、認知行動療法について)、認知行動療法スキル(認知再構成法、行動活性化)を用いた電話介入、振り返りの全6回で構成されている。第三に、研究対象者募集のポスターを作成し、機縁法を用いて対象者の選定依頼を行っている。現在、開発したプログラムを用いて予備試験を行っており、4名の研究対象者に対して全6回の介入が終了している(研究対象者は、男性1名、女性3名)。 現在までの得られた結果として、認知症家族介護者に対する認知行動療法の効果では、介入前後での介護負担感得点、うつ得点ともに減少したが、有意差はみられていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始初年度(2018年)に文献レビュー(論文化)、プログラム開発までは順調に行うことが出来ていたが、研究対象者数の確保が十分出来ていない。本研究では、電話を用いた認知行動療法を行っているが、1週間に1回のセッションを行うため(全6回)研究対象者が1か月半程度の時間的制約を受けること、電話介入の1回のセッションで平均20分程度要することが大きな要因となっていると考えている。研究にご参加頂けなかった方々からは、「時間をつくることが難しい」などのご意見を頂いている(セッションは、研究対象者が希望した日時で実施している)。 現在、プログラムを用いた予備試験として4名の研究対象者に対する介入が終了している。認知行動療法の効果では、介入前後での介護負担感得点、うつ得点ともに減少したが、有意差はみられていない。認知行動療法を用いた介入、さらには電話を用いた手法については「(研修場所まで出向く必要がなく)自宅でやり取りが出来たので良かった」などの肯定的なご意見が頂けている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究開始2年目(2019年)は、研究対象者の確保を行い予備試験を継続する。その後、研修内の振り返りで得られた研究参加者からのご意見をもとに、精神看護の専門家からスーパーバイズを受け、プログラムの修正を行う。 プログラム修正後、研究対象者30名程度に本試験を実施する。本試験では、研究対象者を認知行動療法介入群、対照群①(既存の認知行動療法プログラムによる自己研鑽)、対照群②(通常の生活を営んで頂く)の3群に分け、さらに介入前(T1)・介入後(T2)・2か月後(追跡調査T3)で比較することで認知症家族介護者に対する電話を用いた認知行動療法の有用性を検証する。その後、更に研究対象者を性別で分けて検討することで、男性介護者に対する有用性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は、2018年度から行っている研修参加費等の支払いが、研修の全行程が終了していないため、2018年年度末での支払いを行うことが出来なかったためである。そのため、2018年度分として頂いた助成は申請通り使用させて頂ければと考えている。 また、2019年度助成については、本研究テーマに沿った書籍を出版させて頂くこと(現在所属先に稟議書を提出している段階)、国内外の学会にて研究成果の発表をさせて頂く際の旅費(国外:9th World Congress of Behavioural & Cognitive Therapies「2019.7.17~20」)等で使用させて頂く予定にしている。
|
Research Products
(1 results)