2019 Fiscal Year Research-status Report
地域の見守りに活かす「独居高齢者のフレイル早期発見のための地域活動参加意思尺度」
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18K17663
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
金森 弓枝 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (70781920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 独居高齢者 / 地域活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究目的は、独居高齢者の地域活動参加と健康保持のつながりを構造的に明らかにすることであった。具体的には、2018年度に行った独居高齢者と家族同居高齢者合計12例のインタビューデータを質的統合法にて分析してきており、12例についてすべて個別分析を実施、さらに独居高齢者と家族同居高齢者に分けて総合分析を行う予定で、現在は独居高齢者の個別分析5例が終了したところである。 現時点で得られている独居高齢者における地域活動参加と健康保持のつながりの構造は次の通りである。独居高齢者A氏は、本来の目標志向を基に、日常で得た健康情報や身の回りの様々な事象を、随時、他の住民に伝えるという自己目標に変換し、自ら喜びを作り出していた。そしてこの目標志向行動は、地域の人との挨拶等を通じた主観的幸福感の向上及び互いの体調を気遣い助け合うという同年代における相補的関係性の構築に繋がっていた。また、地域活動への参加継続には、心情面から嫁との適当な距離感や、普段からの体調管理等が影響していた。だがこのように充実した生活の一方で、世知辛い現代社会の中で犯罪に狙われる恐怖を抱え、時代の変化に伴う他世代との相違も感じていた。さらに、独居高齢者B氏は、活動継続を基盤に、地域内での社会的承認の確保と身体的・心理的効果を獲得していた。すなわち、B氏の地域活動参加は、地道に活動に参加することで仲間からの所属の承認を得ることを要に成り立ち、それが健康保持に繋がっているという様相であった。 以上及び他3例からもそれぞれに特徴を持つ構造を抽出しており、独居高齢者にとって地域活動への参加は、主観的健康感の向上や身体的・心理的効果の獲得等に寄与することで健康保持に貢献することが示唆されるとともに、地域活動参加意思に関連する要素となり得ることが現時点において予測される状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビューデータの分析について、当初は大方の要素の抽出を主眼に置き総合分析のみを予定していたが、分析を開始し、また文献検討を進める中で、実質的には個別性から見える要素が尺度開発とその意義を支えるのに重要であることが推察された。加えて、地域活動に参加する独居高齢者の研究は未だ僅少であることを鑑みると、個別に内在する論理性を導いた上で、それを構成している要素を判明させることは、今後、尺度開発の必要性の本質として重要であると考えた。このため、各例において個別分析を行ってから総合分析に進むことに方針を変更した。 また、抽出される構造や要素が独居高齢者特有のものであるかを判別するため、2018年度に家族同居高齢者もインタビュー対象者として追加した。そして当該対象者についても、各例に対する個別分析を行っている。 以上のような分析に関する方針変更が生じたため、当初の予定より進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
各例の個別分析をすべて終了した上で、独居高齢者と家族同居高齢者の総合分析を行い、地域活動に参加する独居高齢者特有の意識を要素として抽出する。また、その際は、現在健康保持の側面からアプローチしている部分についてフレイルとの関連を検討し、尺度案の基礎的資料の生成を目指す。
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Causes of Carryover |
尺度開発のための量的調査に係る費用を予定していたが、質的分析を重層的に行うよう方針変更したため、当該年度においては量的調査費の支出がなかったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度は、質的分析に係る費用及び質的分析の結果として得た成果を学会や学術誌等で公表するための費用として使用予定である。
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Research Products
(2 results)