2020 Fiscal Year Research-status Report
前庭機能の脳内情報処理解明とニューロリハビリテーションの開発
Project/Area Number |
18K17684
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
岡 真一郎 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 助教 (30637880)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 立位姿勢制御 / 頭頂葉 / 脳内情報処理 / 視運動刺激 / ヘッドマウントディスプレイ / 経頭蓋交流電流刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本本研究の目的は,立位姿勢制御における頭頂葉の脳内情報処理機構を解明し,ニューロリハビリテーションを開発することである.頭頂葉は,外界の情報である視覚視空間情報と頭部の動きを感知する前庭情報を処理することが示唆されている.そこで,本研究では,頭頂部に経頭蓋電気刺激を用いて,立位姿勢制御と頭頂部脳機能との機能連関を検討した. 2018年度は,一側頭頂部に対する経頭蓋直流電流刺激(transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)を用いて頭頂部の一過性機能抑制し立位姿勢制御と頭頂部脳機能との機能連関を検討した.その結果,立位姿勢制御において,右頭頂部は視空間情報処理,左頭頂部は前庭情報処理と関連すること,視覚と前庭覚で相反的に作用していることが分かった. 2019年度は,頭頂部の脳内情報処理特性を詳細に検討するため,経頭蓋交流電流刺激(transcranial Alternative Current Stimulation:tACS)を用いて,刺激前後の重心動揺検査を行った.その結果,立位姿勢制御における頭頂葉の前庭情報処理は、周波数20Hz,前庭覚,視覚,体性感覚による複合的な感覚情報処理は40Hzで行われていることが示唆された. 2020年度は,頭頂葉が賦活される視運動刺激(Optokinetic Stimulation:OKS)が脳活動と立位姿勢制御に与える影響を検討した.重心動揺検査は,固い床条件, ラバーマット条件で行った.OKSは,スマートフォンを用いたヘッドマウントディスプレイ(S-HMD)で横方向白黒スリット刺激を行った.その結果,ラバーマット条件での身体動揺が減少し, 右側頭部脳活動と相関を認めた.本研究の結果,S-HMDによるOKSは簡易的なニューロリハビリテーションとして活用できることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニューロリハビリテーションプログラムの条件設定について,立位での脳波測定の調整に関する予備実験が必要となったため,本年度の実験開始が遅延した.現在は,ニューロリハビリテーションの介入と脳活動の関連性について分析を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果として,①立位姿勢制御における脳内情報処理には頭頂部が関与していること,②立位姿勢制御における頭頂部の脳活動は周波数特性を有すること,③スマートフォンを利用したヘッドマントディスプレイ(S-HMD)による視運動刺激(OKS)は,立位姿勢制御に対する簡便なニューロリハビリテーションとして活用できることを明らかにした. 本年度は,立位姿勢制御に対するニューロリハビリテーションを実施する上で多くの課題が残されている.本研究で用いたスマートフォンアプリケーションによるOKSは,同一の刺激条件で実施している.tACS studyから,立位姿勢制御において頭頂部脳活動は周波数特性を有していることが分かっている。そのため,HMDによるOKSプログラムを開発し,対象者の身体特性に応じたOKSを提供する必要がある.OKSによる長期効果の検証を行わなければならない. 今後の研究の推進方策について,環境に適応するための感覚戦略は,視覚,体性感覚,前庭覚の重み付けを変化させている.感覚の重み付けのベースラインは,個人の発達過程,運動経験,生活習慣,疾患による障害の影響を受けることが知られている.そのため,立位姿勢制御に対するニューロリハビリテーションは,感覚戦略の特性に合わせて複合的な感覚刺激によるプログラムを構築する必要がある.そして,このニューロリハビリテーションプログラムは,立位姿勢制御から歩行,方向転換など,複雑なパフォーマンスの向上に発展させていくことで,平衡機能の改善と転倒予防対策として社会実装を目指す.
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況から,国際学会への参加の取りやめ,国内学会のオンライン開催となったため旅費が不要となった.また,実験可能な時期が限られていたため,視運動刺激は刺激条件が限定されるスマートフォンアプリケーションによるヘッドマウントディスプレイ(S-HMD)で代替して予備実験を実施したことで,備品購入経費を計上しなかった. 本年度は,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)による視運動刺激を開発し,ニューロリハビリテーションプログラムの効果検証を行うための経費を計上する.計上する経費は,HMDのコントローラとして使用可能なスペックのPC,開発経費,被験者の謝礼を計上する.また,これまでの研究成果を論文で発表するため,英文校正費,論文投稿料を計上する.
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