2018 Fiscal Year Research-status Report
荷重センサーを用いた新しいバランス練習アシストの有効性と作用機序の検討
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18K17694
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
角田 哲也 藤田医科大学, 医学部, 助教 (80795609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リハビリテーション医学 / リハビリテーションロボット / バランス / 転倒予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
在宅高齢者における転倒の年間発生率は約10~20%とされており,転倒の5~10%に骨折が発生すると言われている.豊かな高齢社会を実現するために,転倒予防の意義は大きい. 我々は,より効果の高いバランス練習を提供するため,トヨタ自動車株式会社と共同でバランス練習アシスト(BEAR)の開発を進めてきた.BEARは,立ち乗り型ロボット,患者用モニタ,安全懸架装置から構成される.3種類のバランス練習用ゲームがあり,モニタを見ながら立ち乗り型ロボットを操作して,楽しみながらバランス練習が実施可能である.これまでに,維持期の片麻痺者や虚弱高齢者において,バランス能力改善に有効だったとする報告がある.我々は,BEARの有効性を更に高めるため,幾つかの改良を加えた.具体的には,足部に荷重センサを搭載して,より直感的にロボットの操作を可能としたり,運動負荷を高めるようゲーム内容を改良したりした.本研究は,新しいBEARの効果を検証することを目的としている. 2018年度は,維持期の易転倒者に対して,同日にBEARを用いたバランス練習,従来のバランス練習を行い,脈拍数の変化量を用いて運動負荷を比較する試験を進めた.3名の患者での予備的実験では,脈拍数の変化量は平均値,最大値ともBEARを用いたバランス練習において高い値を示した.この結果は,新しいBEARが,高い運動負荷の練習を提供できた可能性を示唆しており,より効果の高いバランス練習に繋がることが期待できる.この結果は,第34回日本義肢装具学会学術大会(2018年11月10日名古屋)にて報告を行った. また,これまでは維持期の患者を中心に検証を行ってきたが,亜急性期の患者においても効果が期待できるため,回復期リハビリテーション病棟での検証を行う方針とした.2018年度にプロトコルを策定,特定臨床研究の承認を得て,2019年4月より研究を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に進めてきた実証試験の結果,新しいバランス練習アシストが通常訓練より運動負荷が大きい可能性が示唆された.新しいBEARは,運動負荷の点でも優れており,より効果の高いバランス練習として転倒予防にもつながることが期待できる. 一方で,新しいBEARを片麻痺者で使用する際,麻痺側の足元の位置がずれてしまう症例がいるという問題点が判明した.全ての片麻痺者が安全に使用できるよう,足ずれを防止する改良を加えることとなった.改良と並行して,左右の荷重割合に左右差がある片麻痺患者がロボットを乗りこなす方法に関して検討を加えた.約20名の片麻痺患者に対して予備的に検討を行い,ロボットの荷重中心を変更する,下肢装具の背屈角度を調整する,膝折れがみられる患者には膝装具を使用するなどの工夫を行うことで,安全性に問題なくロボットを操作可能であることを確認した. 亜急性期(バランス障害の原因となる疾患の発症、外傷の受傷から2週間以上経過した患者)まで適応範囲を広げたプロトコルを策定し,特定臨床研究の承認を得て,2019年4月より開始とした. 以上のように,新しいBEARの安全性を確認し,研究を開始した点では順調だが,新しいBEARの有効性,作用機序解明が十分に進んだとは言えないため,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
新しいBEARの有効性を示すための実証試験を推進する.亜急性期の入院患者においては,バランス障害の原因となる疾患の発症,外傷の受傷から2週間以上経過した患者においての介入を行う.具体的には,介入は1日40分,入院患者の場合は13日間連続して行う.維持期の外来患者においては,週2回,合計16回の介入を行う.介入途中に,従来練習および新しいBEARを用いた練習を実施中の脈拍,酸素飽和度の測定,三次元動作解析及び表面筋電図計測を行う. また,健常者に対しても新しいBEARを用いたバランス練習を行い,実施中の脈拍,酸素飽和度の測定,三次元動作解析及び表面筋電図計測を行う. これにより,健常者,患者におけるバランス能力向上がどのような機序で起こるか明らかになると考えられる.練習経過と照らし合わせることにより,各練習の作用機序の解明にも有用であると思われる.
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Causes of Carryover |
(理由) 研究内容の一部変更に伴い,購入予定内容を変更し,バランス評価に必要な斜面台やカメラ等の購入に充てた. (使用計画) 消耗品購入に充てる予定である.
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