2018 Fiscal Year Research-status Report
ストレッチングによる伸張部位の探索的研究:医学的測定と工学的測定を併用した試み
Project/Area Number |
18K17696
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
松尾 真吾 日本福祉大学, 健康科学部, 助教 (30725700)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スタティック・ストレッチング / ダイナミック・ストレッチング / 柔軟性 / 関節可動域 / stiffness / 筋伸張量 / 三次元変形・変位測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節可動域制限は主に関節周囲の軟部組織の伸張性や弾性の低下に起因して生じ,臨床場面ではこれに対してストレッチングが有効な介入方法として広く用いられている。しかしながら,ストレッチングがどの部位(組織)の伸張性を改善しているのか,またその伸張部位はストレッチング方法により異なるかどうかは未だ明らかではない。そこで,本研究では,近年工学分野で発展している三次元変形・変位測定を,従来ストレッチングの効果判定に用いられてきた等速性運動機器および超音波エコーと併用することで,ストレッチング後の組織別の伸張性または弾性係数の変化をそれぞれ確認すること,ならびにストレッチング方法の違いによる伸張部位の違いを確認することを目的としている。本研究結果は,可動域の制限組織別に最善のストレッチング方法を提案するための基礎的資料となりうる。 スタティックまたはダイナミック・ストレッチングによる伸張部位の検討を行った実験では,1)どちらのストレッチング方法においても,実施後に関節可動域および痛みが生じる直前の受動トルクが有意に増加し,受動スティフネス,腓腹筋内側頭における筋腹および腱膜の剪断弾性係数が有意に低下すること,2)スタティック・ストレッチング実施後でのみ,腓腹筋内側頭における筋腱移行部の変位量が有意に増加すること,3)スタティック・ストレッチング実施後の腓腹筋内側頭における腱膜の剪断弾性係数の低下率は,ダイナミック・ストレッチング実施後よりも有意に大きいこと,4)スタティック・ストレッチング後の皮膚のひずみ量は1%未満であることを明らかにした。 今後は,ダイナミック・ストレッチング後の皮膚のひずみ量についても検証するとともに,スタティック・ストレッチングおよびダイナミック・ストレッチングの併用が各評価指標に与える影響についても併せて検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,近年工学分野で発展している三次元変形・変位測定を,従来ストレッチングの効果判定に用いられてきた等速性運動機器および超音波エコーと併用することで,ストレッチング後の組織別の伸張性または弾性係数の変化をそれぞれ確認すること,ならびにストレッチング方法の違いによる伸張部位の違いを確認することを目的としている。 2018年度においては,スタティックまたはダイナミック・ストレッチングによる伸張部位の検討を行った。結果,どちらのストレッチング方法においても,実施後に関節可動域および痛みが生じる直前の受動トルクが有意に増加し,受動スティフネス,腓腹筋内側頭における筋腹および腱膜の剪断弾性係数が有意に低下すること,スタティック・ストレッチング実施後でのみ,腓腹筋内側頭における筋腱移行部の変位量が有意に増加すること,スタティック・ストレッチング実施後の腓腹筋内側頭における腱膜の剪断弾性係数の低下率は,ダイナミック・ストレッチング実施後よりも有意に大きいこと,スタティック・ストレッチング後の皮膚のひずみ量は1%未満であることを明らかにした。 以上の結果より,腱膜のスティフネスおよび筋の伸展性を改善するためには,ダイナミック・ストレッチングよりもスタティック・ストレッチングがより効果的であることが示唆された。このことは,関節可動域の制限組織別に最善のストレッチング方法を提案するための基礎的資料となりうる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に行ったスタティックまたはダイナミック・ストレッチングによる伸張部位を検証した実験では,どちらのストレッチング方法においても,関節可動域,痛みが生じる直前の受動トルクおよび受動スティフネスといった柔軟性指標が改善すること,一方で腱膜のスティフネスの指標として用いた腓腹筋内側頭における腱膜の剪断弾性係数および筋の伸展性の指標として用いた筋腱移行部の変位量は,ダイナミック・ストレッチング実施後と比較してスタティック・ストレッチング実施後により大きく改善することなどを確認した。これらの結果を基に,スタティックおよびダイナミック・ストレッチング実施後の皮膚のひずみ量について更に詳細に検討するとともに,2019年度はスタティック・ストレッチングおよびダイナミック・ストレッチングの併用が各評価指標に与える影響について検証し,2018年度に得られた結果と比較・検討することで,関節可動域の制限組織別に最善のストレッチング方法を提案するための基礎的データを構築する。
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