恐怖・不安環境下での姿勢安定性に関わる意図的な注意制御

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K17699
• Research Institution: Kobe International University
• Principal Investigator: 大谷 啓尊 神戸国際大学, リハビリテーション学部, 助教 (50732997)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 姿勢制御 / 情動 / 注意

Outline of Annual Research Achievements

【背景】転倒に対する恐怖・不安感が強い者は、自己の身体に対する注意（内的焦点化）が高めて身体の安定化を図ることが報告されている。本研究では、個々の内的焦点化と情動が惹起された際の立位バランス等に及ぼす影響を検討した。【方法】健常若年者14名を対象とした。実験課題は、国際情動写真集から選択された恐怖・不快画像と中性画像を被験者前方のスクリーンに提示した。その間、立位バランスは重心動揺計により計測し、交感神経活動度の指標として、ウェアラブル心拍センサにより計測された心拍間隔からLF/HF比を算出した。筋電図活動は、表面筋電図を用いて立位保持中の下腿部の前脛骨筋とヒラメ筋の筋活動を計測し共同収縮率を算出した。画像提示による情動惹起の程度は、視覚的アナログ尺度(VAS)を用いて確認した。測定条件は、恐怖・不快条件、中性条件、コントロール条件（画像提示なし）の3条件とした。立位バランス、交感神経活動度、筋電図活動はコントロール条件からの変化率を算出し解析に用いた。個々の内的焦点化の程度は、Movement Specific Reinvestment Scale(MSRS)により評価した。【結果】恐怖・不快条件は中性条件と比較し、交感神経活動度の上昇および重心動揺の減少を認めた。筋電図活動は、条件の違いによる差は認められなかった。MSRSはVASと負の相関を認め、立位バランス等への指標との関連は認められなかった。【考察】本研究の結果より、恐怖・不快情動の惹起は身体を固めるようなfreezingの反応を引き起こすことが示唆された。健常若年者においてMSRSの点数が高い（内的焦点化が強い）者は、身体外部から与えられる情報に対する情動惹起が生じにくいことが可能性があるため、今後は高齢者における特性を検討し、若年者との比較を行う予定である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

使用する筋電計を制御するためのパーソナルコンピュータのトラブル等により、計測システムの見直しを行った。当初の研究計画により被験者数を十分に確保できなかったが、14名の被験者でも情動惹起による立位バランスと交感神経活動度の変化が認められた。

Strategy for Future Research Activity

本年度の研究については、昨年度実施できなかった高齢者を対象とした計測を実施する。また、本年度の計測に必要な実験環境を昨年度中に整備できたため、研究計画に沿って計測を行っていく。

Causes of Carryover

当該研究では、筋電計を制御するパーソナルコンピュータの不具合により実験に支障が生じたため、計測にかかる実験環境の整備に対し当初の予定以上の使用額が生じたため。本年度は、主に計測に必要な消耗品類や人件費および謝金、成果発表にかかる旅費に充てる予定であり、計画的に使用できると考える。