2019 Fiscal Year Research-status Report
Adaptation and validation of the Japanese self-report version of the Spinal Cord Independence Measure (SCIM III)
Project/Area Number |
18K17705
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
竹内 翔 関西医科大学, 医学部, 病院助教 (40814190)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 脊髄損傷 / 日常生活動作 / セルフレポート |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷に特異的な日常生活動作(ADL)評価法であるSCIM (Spinal Cord Independence Measure)は、世界標準で疾患を問わないFIM (Functional Independence Measure)では評価対象とならない呼吸やベッド上の除圧動作などを含んでおり、感度等の面でもFIMより優れているとの報告されている。SCIMをはじめとするADL評価尺度は、その煩雑さなどの面から入院患者を対象とするに留まっていた。しかし、外来患者のADLを評価することなしに医療・介護で切れ目のないリハを提供することは困難であり、世界的にも外来患者のリハニーズを捉える必要性が高まってきたことを受けて、セルフレポート形式のSCIM(SCIM-SR)が開発された。SCIM-SRは英語だけでなくドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語に翻訳されている。本研究では、入院だけに限らず外来の脊髄損傷患者のADLを一貫して評価していくことを念頭に、日本語版SCIM-SR(jSCIM-SR)を作成し、その妥当性をSCIMと比較することで示し、有用性を明らかにすることを目的に取り組んできた。2018年度にjSCIM-SRの作成、ならびにその翻訳の妥当性を示した上で、100人の患者に対して、医療従事者がSCIM-SRを用いて、患者本人がjSCIM-SRを用いて、ADLの評価を行った。今年度は、jSCIM-SRの評価法としての妥当性を検討するために、SPSSを用いてSpearman順位相関係数やBland-Altman methodを用いて解析を行った。また関連論文と書籍を収集して、背景について改めて整理しながら、論文執筆を行っている最中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在論文執筆中であり、2020年度上半期での投稿を目指すことができると考えている。2020年度での掲載を目指す。 すでに公開されている英語版SCIM-SRの日本語訳を行った。翻訳は筆者と、SCIMに習熟した村山医療センターのリハビリテーション科医2名で行い、それぞれの版を突き合わせ適宜修正を行った。修正された日本語ドラフト原稿を日本語・英語の多重言語使用者により英語へと逆翻訳する。逆翻訳された英語版ドラフト原稿を、高等英語教育を受けたボランティア30名により7段階のリッカート尺度(1:完全に一致、7:全く同一とは言えない)で、言葉使いの同等性と意味の相同性を元々のSCIM-SRの各項目と比較し検定した。各項目に対して得られたリッカート尺度の平均値が3以下となるまで、翻訳・逆翻訳を繰り返した。こうして翻訳の妥当性を示した上で、100人の患者に対して、患者本人がjSCIM-SRを用いて、ADLの評価を行った。また、診療録から研究参加者が回答したのと同月のSCIMの点数(病棟看護師が採点)、性別、年齢、麻痺の様子(四肢麻痺か対麻痺か、完全か不全か)、受傷後期間、入院の理由(リハか褥瘡治療か)を抽出した。 今年度は、jSCIM-SRの評価法としての妥当性を検討するために、SPSSを用いてSpearman順位相関係数やBland-Altman methodを用いて解析を行った。また関連論文と書籍を収集して、背景について改めて整理しながら、論文執筆を行っている最中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
執筆を継続しながら、投稿を目指す。受理に向けたやりとりや、投稿雑誌の再考を踏まえて、今年度中の掲載を目指す。 過去の報告におけるSCIMとSCIM-SRの相関に関しては必ずしも一貫しているとは言えない。一つには、褥瘡などで入院した患者が質問紙で回答する時に、動作の制限を受けている現状ではなく、入院前の状態を想定して回答しているからだと考えられている(Fekete et al.,Spinal Cord., 2013)。事実、外来患者を対象としたスペイン語版SCIM-SRはSCIMと相当高い相関を示したことからも、それは裏付けられるだろう。本研究では、対照として正確なSCIM点数を用いるという観点から入院患者のみを対象としている。また、いかなる状態の患者でもjSCIM-SRが使用できることを示すため、いわゆる回復期の患者だけではなく、褥瘡などの体調不良で入院している患者も、研究参加にあたり支障のない限り対象とすることとした。今後考察を深めていきたい。 また過去の研究との相違として、SCIMの合計点、SCIMのsubscaleの3領域(セルフケア、呼吸・排泄、移動)だけでなく、17項目の相関についても解析と考察を行っていく。SCIMは合計点だけで無く、各項目の評価にも用いるため、その評価をSCIM-SRで代用できるかどうかは、今後SCIM-SRを使用できるかどうかを判断するのに、重要な観点であると考えている。
|
Causes of Carryover |
論文投稿にむけた準備にあてる金額が中心になるだろう。 脊髄損傷やADL評価について、書籍・雑誌から知見を集める必要がある。SPSSの解析と論文執筆を進めるために、タブレットを必要とする。また、論文の書き方についても情報を集中しつつ、勉強会に参加することで、質の高い論文の作成に生かしていきたい。 論文の執筆に際して、表現の修正のために、ネイティブにより修正を依頼していく予定である。さらに論文投稿費にも充填していきたい。また最新の結果の報告のため、国際学会で情報収集を行う必要があり、旅費も発生することが予想される。
|