2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17717
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 玲欧奈 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (50812640)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / サル / 巧緻運動 / 精密把持 / ECoG / EMG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サルの脊髄損傷モデルを用いることで、脊髄の損傷部位の大きさが手指の器用な運動機能の回復過程にどのような影響を及ぼし、それによって機能回復の神経基盤に違いがあるのかどうかを明らかにすることを目的とする。 初年度では、1頭のマカクザルで巧緻運動課題をできるようにトレーニングを行った。手指の筋肉の活動を記録するために、筋電図電極を12個の筋肉に埋め込んだ。また、慢性的に複数の脳領域から脳活動を記録するために皮質脳波電極を埋め込んだ。脊髄を損傷させる前に、巧緻運動中の脳活動・筋活動・手指の動きを記録した。 先行研究では外側皮質脊髄路のみを損傷させたモデルを用いて回復過程を調べた。その結果、手指の巧緻性は約3か月後には回復した。本実験では第4頚髄と第5頚髄間の境界部において、外側皮質脊髄路が下行する側索の範囲を超え、前索の一部まで損傷したモデル動物を作成した。 脊髄損傷後、サルは毎日リハビリテーションを行い、回復過程と脳活動・筋活動を5か月間に渡って記録した。損傷から約1か月後、到達把持運動ができるようになり、徐々に手指が動くようなった。しかし、5か月経過しても巧緻性は完全に回復することなく、本研究のような大きな損傷モデルでは、巧緻性が完全に回復しないことが明らかになった。脳活動においては、損傷と反対側の一次運動野の高ガンマ帯域の活動と損傷と同側の運動前野のベータ帯域の活動が、損傷前と比べて有意に大きくなることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、同一個体に巧緻運動課題をトレーニングした後、筋電図電極と皮質脳波電極を慢性的に埋め込み、先行研究の損傷モデルよりもさらに大きい損傷モデルを作成し、回復過程および脳活動を記録することができた。さらに、記録終了後は下行路を確かめるため、順行性トレーサーを両側の一次運動野に注入した。このように一頭のモデル動物から損傷前後の行動データ・脳活動データ・組織データを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は個体差を検討するため、別なサルを用いて巧緻運動をトレーニングし、筋電図電極と皮質脳波電極を慢性的に埋め込んで、精髄損傷後の行動データ・脳活動データを記録する。さらに、記録終了後には、下行路を確かめるため、順行性トレーサーを一次運動野に注入する。解析においては、皮質脳波電極から得られたデータを基に、各電極間のグレンジャー因果性を計算し、脳領域間の因果関係を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
既存にいた動物を使えることなり、新規に購入する必要がなくなったため。
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Research Products
(6 results)