2019 Fiscal Year Research-status Report
快感情調整による認知機能向上効果の解明-顔面皮膚血流計測を用いて
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18K17718
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
遠藤 加菜 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (60584696)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感情 / 顔面皮膚血流量 / 嗅覚刺激 / 近赤外分光法 / 脳血流動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
①本研究計画では、嗅覚刺激による感情変化とそれに伴う顔面皮膚血流量の変化が、認知機能および大脳皮質脳活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。今年度は10名の健康な成人(22.3±0.1歳)を対象に、嗅覚刺激時の顔面皮膚血流量(Facial SBF)をレーザー血流計によって計測し、主観的快・不快度との関係を調べた。同時に,近赤外線分光計を用いて前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb)を計測した。嗅覚測定用基準臭(T&Tオルファクトメーター)における嗅覚の検知閾値、認知閾値、主観的快・不快度、主観的覚醒度、および主観的匂い強度を予め評価した。認知閾値での主観的聴取に基づいて、ピーチ臭を快刺激、靴下臭を不快刺激、無臭パラフィンを対照刺激として定義した。実験課題は背臥位、閉眼で2分以上の安静後、12秒間の嗅覚刺激、続いて3分以上の安静とした。嗅覚刺激は匂い装置を用いて流速10ml/secで12秒間鼻下に提示した。
②主観的快・不快度は靴下臭において有意に低下し,ピーチ臭において有意に増加した(-2.8±0.3,vs. 0.8±0.3)。Facial SBFは対照臭で変化しなかったが、ピーチ臭および靴下臭において刺激提示約12秒後から緩やかに増加し、約2分後にピークに達した後、減少傾向を示した。Facial SBF増加量は靴下臭においてのみ有意であった。前頭前野Oxy-Hbは靴下臭のみ有意に増加した。前頭前野Oxy-Hb増加量はFacial SBF変化量との相関を示した(y=0.42x+0.19,R=0.51,P<0.01)。また、主観的快・不快度は前頭前野Oxy-Hb増加量との相関を示した(y=-0.32x+0.26,R=-0.4,P<0.01)。
③健常成人において嗅覚刺激に伴う不快感情は顔面皮膚血流の増加反応および前頭前野血流量の増加を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究室が再編成されることとなり、研究・実験環境を新たに整備する必要性が生じたことに加え、本研究に関する研究計画に関して、改めて倫理申請手続きをやり直すことが必要となった。そのため、準備と手続きに想定外の時間を要した。また、実験の補助メンバーを新たに募集することや実験参加者の募集システムを整える準備が必要となり、実験を本格的に再開させるまでに時間を要した。 2019年度は当初の研究計画に基づいて、嗅覚刺激に伴う感情変化が顔面皮膚血流反応および脳血流動態に及ぼす影響について実験を行ったが、予備実験での嗅覚刺激提示用の匂い装置の試作・試行等の準備に想定よりも時間を要した。そのため本実験では10名の被験者からデータを取得するにとどまった。以上のことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 2019年度は研究目的である、嗅覚刺激による感情変化における顔面皮膚血流反応を用いた評価の有効性についてのデータを得た。その結果は、不快な嗅覚刺激時に顔面皮膚血流の増加および前頭前野ヘモグロビン動態の増加が起こることを示した。この結果から、感情変化と血流変化との因果関係について言及することはできない。しかし、嗅覚刺激により誘発された不快感情に伴って、顔面皮膚血流量の増加応答が起こる可能性があること、また、顔面皮膚血流量や前頭前野脳活動は嗅覚刺激により誘発される感情評価に応用できる可能性があることが示唆された。得られた研究成果について、年度内の学会発表を目指す。また、これまでに得られたデータを精査し、今後の追加実験の必要性、あるいは実験方法の改善について検討する。
2020年度は、当初の研究目的であった顔面皮膚血流量から評価した感情が認知機能に与える影響と大脳皮質活動との関連についても検証する。嗅覚刺激に伴う感情変化が前頭葉認知機能に与える影響を解明するために、嗅覚刺激が認知課題等のパフォーマンスに及ぼす効果について調べることを計画している。
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Causes of Carryover |
必要な経費を使用した結果、繰越金が生じた。 次年度においては、謝金・旅費・消耗物品費の購入等に使用する。
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