2020 Fiscal Year Research-status Report
身体運動学・心理学的アプローチによる理学療法士のハンドリング手技のエビデンス構築
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18K17729
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
鈴木 博人 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 助教 (50635430)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 理学療法士 / 動作指導 / ハンドリング / 運動学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には理学療法士のハンドリング技術の臨床経験の違いによる差異を定量的に明らかにする実験を行った。対象は熟練理学療法士(ePT群)、新人理学療法士(bPT群、)日常的に運動・動作指導の習慣がない者(Control群)とした(各群10名)。学習課題にはこれまで同様 に「バーを避けながらのリーチ動作」を採用した。研究デザインとして、まず対象者に再現させるリーチ動作の映像を視聴させ、その後に映像観察した動作をオリジナルの上肢モデルで再現することを求めた。映像視聴と5試行の練習を計3セット実施させ後、本測定を5試行行った。本測定では、上肢モデルの中指先端に貼付した赤外線反射マーカーを、3 次元動作解析装置で計測した。データ解析として、3次元データから指先軌跡長、所要時間、ピーク速度とタイミング、ピーク加速度とタイミング、正規化ジャークコスト(運動の滑らかさ)を算出し、さらに目標値と実測値の誤差を求めた。その結果、ePT群は所要時間の再現において他の2群より優れていた。また、速度や加速度のピークタイミングにおいても、ePT群がControl群よりも優れていた。さらに、運動の滑らかさもePT群がControl群よりも優れている傾向があった。一方、指先軌道長においては群間差が見られなかった。 結果より、理学療法士はハンドリングによる運動パターンの再現において「時間的制御」に優れている可能性が示された。また、熟練した理学療法士は、空間的な正確性を保ちつつ、時間的な再現も正確に行っている可能性が示された。さらに、運動の滑らかさも類似している傾向があった。 指先軌道のデータでは空間的なパラメータに差が認められなかったが、映像を観察する限り、関節角度の再現性においてはePTが優れいてる可能性がある。この後は関節角度データの収集も行えるよう、実験機材の追加などを検討し実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度はCOVID-19による研究活動の制限により新たなデータ収取ができなかった。この背景には感染拡大防止があり、具体的には「実験室へ外部者の入館が制限されたこと」、「本研究の対象である医療専門職が所属機関外への移動を制限されたこと」が大きな要因である。そのため、2019年度までに収集したデータの解析のみの活動となった。 したがって、研究機関を1年延長した。2021年度にはCOVID-19の感染状況に応じて追加データの収集を検討する。また、現状で収取できているデータの発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はハンドリング技術の定量化をはかり、その結果を踏まえて運動学習への有効性を検証することが大きな目的である。しかし、研究の進行に伴い、運動学習の有効性を検証するに先立ち、ハンドリング技術の定量化をさらに進める必要性が高まった。そのため、本研究課題としては、「理学療法士のハンドリング技術の定量化」に主眼をおいた研究として進める。2021年度は研究成果発表に際して追加が必要になったデータを収集を中心に行う。 本研究課題によりハンドリング技術の定量化をはかり、当初予定していた「ハンドリングが有する運動学習効果の解明」については次の研究課題として設定することを予定している。
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Causes of Carryover |
概ね予定通り支出しているが、新たなデータ収集がCOVID-19の影響で行えたかったため、被験者支出が影響したと判断している。次年度使用額について は実験における被験者謝礼や報告に関する支出とする予定である。
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