2018 Fiscal Year Research-status Report
マルチセンサの有機的統合による運動器不安定症発症予測アルゴリズム開発
Project/Area Number |
18K17733
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
飯島 弘貴 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 特別研究員(PD) (20816631)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 変形性膝関節症 / 腰痛 / 転倒 / 階段昇降 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、複数の小型センサの有機的統合に挑戦し、変形性膝関節症患者の階段昇降や歩行転換等の動的課題における機能的移動能力を非侵襲で評価可能なシステムを提案する。この計測システムを用いてコホート調査を行い、転倒を招きやすい運動器不安定症の発症予測アルゴリズム構築を最終目標とする。 初年度では以下の2点が明らかになった。(1)変形性膝関節症189名(平均年齢74.4歳;女性比78.0%)を対象に、転倒状況の調査ならびに転倒と関連する因子を探索した。41名(21.7%)が過去1年に転倒を経験していた。変形性膝関節症の中でも、中等度レベル以上の腰痛を有する者は複数転倒を経験し易かった(オッズ比:3.72;95%信頼区間:1.45, 9.58)。(2)センサを用いた運動器不安定症発症アルゴリズムの有効性を検証する上での比較対象を設定するため、変形性膝関節症59名(平均年齢59.1歳;女性比72.9%)を対象に、ストップウォッチを用いた階段昇降テストの信頼性・妥当性検証を行った。級内相関係数は信頼性で0.95(95%信頼区間:0.56, 0.99、妥当性で0.96(95%信頼区間:0.66, 0.99)と、高値を示した。しかし、ストップウォッチによる計測時間の関節症重症度判別能は低く、転倒や運動機能の予測能が低いことが示唆された。 上記(1)の結果は、変形性膝関節症患者における腰痛が転倒ひいては運動器不安定症の危険因子であることを示唆する。今後はコホート調査で腰痛-転倒の因果関係を同定するとともに、同時計測したセンサ解析結果と転倒ならびに運動器不安定症との関連性を検討していく。 上記(2)の結果は、ストップウォッチによる計測は高い信頼性と妥当性を示すものの、転倒を予測する上で、ストップウォッチ単独では不十分であることが示唆された。階段昇降中の転倒は骨折などの原因となり重症化し易いことから、階段昇降中に同時計測したセンサ情報と転倒との関連性を今後検討していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度では、計測システムの構築と変形性膝関節症患者を対象とした検証を行う予定であったが、実際には患者データ取得でとどまり、解析や検証まで到達できなかった。当初は変形性膝関節症患者100名を計測対象予定としていたが、実際には200名以上の参加希望者がいた関係で、そのリクルートや計測に時間を費やしたことが大きな理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の研究概要より、腰痛が転倒ひいては運動器不安定症の発症予備群になる可能性が浮上したため、今後は腰痛に着目したコホート研究や、センサデータ解析を行っていく。これらと並行して、階段昇降動作を対象としたセンサデータ解析を行うことで、提案する計測システムがストップウォッチ単独よりも高い転倒予測能を有するのか、その有効性を検証する。
|
Causes of Carryover |
初年度では予想を超える被験者数のデータ計測を行ったため、センサ計測結果の十分な解析に至らず、それに係る費用を次年度に持ち越すことになった。初年度に購入する予定だった歩行訓練用階段も、普段実際に使用している階段を検証実験の場として利用可能であったため、その分の経費を次年度の解析費用ならびに国内外の研究成果発表費用として併せて計上することとした。
|