2018 Fiscal Year Research-status Report
暮らしに溶け込んだ二重課題を用いた在宅型の認知機能低下予防プログラムの開発
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18K17740
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
横井 賀津志 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (50506912)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域在住高齢者 / 生活行動 / 作業 / 二重課題 / 認知機能 / 在宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究Ⅰ】わかやまヘルスプロモーション研究に参加した675名を対象に,個人が大切する生活行動と主観的健康感,健診データとの関連性を横断的に調査した.大切な生活行動とは,「自分の時間を割いて,自分らしさを感じ,人生に意味をもたらす活動」と定義し,作業療法士が用いる作業と同義とした.生活行動アンケートは,意味ある作業名,最重要作業名,作業遂行度,作業満足度,頻度,領域,継続期間とした.統計解析には,主観的健康感および健診データの基準値を2値化し従属変数とし,生活行動特性を独立変数とした多変量ロジスティック解析を用いた.結果,665名(98.5%)が大切な生活行動と結びついていた.生活行動はセルフケアの領域が多く,女性は男性より数が多かった.高い主観的健康感は作業遂行度得点の高さと有意に関連し,調整オッズ比は1.26(95%Cl:1.03-1.53)であった.利き手握力が,男性26kg以上,女性18kg以上であることは,作業遂行度得点の高さと,困った時に相談相手がいることは,3つの作業との結びつきと,物忘れによる困りことが無いことは,作業の頻度が毎日か週単位であること有意に関連し,調整オッズ比はそれぞれ1.33(95%Cl:1.10-1.61,1.67(95%Cl:1.03-2.71,1.13(95%Cl:0.99-1.28)であった. 【研究Ⅱ】先行研究より,認知機能の維持・改善に効果的な二重課題をレビューした.結果,運動に付加する認知課題は,計算などの数を用いる課題,詩や俳句を詠む文学的課題,しりとりなどの字を用いる課題に分類できた.想起やエピソード記憶を用いることも有効であった. 研究ⅠとⅡから,個人の生活行動に認知課題を組み込むためのシートを作成し,地域在住高齢者30名(男性15名,女性15名)を対象に,生活行動に認知課題を組み込んだ予備的介入を開始している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域在住高齢者675名(男性283名,女性392名)に対し,個人が大切にしている生活行動特性に関する調査を終えた.大切にしている生活行動は,暮らしに溶け込んでいることが判明し,主観的健康感や身体的・社会的・精神的フレイルにも肯定的な関連を示した. 先行研究レビューにより,認知機能低下抑制に効果がある二重課題を分析すると,数字課題,文字課題,文学的課題,想起・エピソード課題に分類できた.この結果から,暮らしに溶け込んだ生活行動の形態の中に,認知を刺激する二重課題を組み込むことができることが分かった. 現在,地域在住高齢者30名(男性15名,女性15名)を対象に,在宅で実施できる生活行動に認知課題を組み込んだ予備的介入を実施している.結果指標は,ウエクスラー記憶検査,CAT・CAS ,SF-36,CES-Dとした.
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Strategy for Future Research Activity |
生活行動に二重課題を組み込む在宅型プログラムによる認知機能低下の予防効果を解明するため,ランダム化比較試験を実施する. 【2019年度から2020年度】 2019年度の前半は,前年度からの予備研究を継続する.後半は,予備研究において結果指標とした,ウエクスラー記憶検査とCAT標準注意検査結果からサンプルサイズを推定し,ランダム化比較試験(生活行動に二重課題を組み込んだ群 VS 二重課題群 VS 大切な生活行動群)を開始する.結果指標は,エピソード記憶(ウエクスラー論理的記憶),視空間認知(レイ複雑図形),注意機能(標準注意検査法・標準意欲評価法)とする.副次的に主観的健康感 (SF-36)とうつ尺度 (CES-D)を用いる.予備研究において,二重課題の設定などに検討課題が見つかれば,ランダム化比較試験前に介入方法を修正する. 【2021年】 介入終了後の継続率をインタビューにて解明する.最終的に,自宅でできる生活行動に二重課題の要素を組み込んだ認知機能低下予防プログラムを一般化するためのモデルを作成する.
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Causes of Carryover |
2018年度後半の計画であった予備的研究において,研究参加者への謝礼(30名×2500円)および研究協力者への謝礼を支払うことになっている.2019年度は当初の予定通り,前半に予備調査を継続し,2回目の評価を実施する.後半は,当初の計画通り,ランダム化比較試験を遂行するため,使用額に変更はない.
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