2019 Fiscal Year Research-status Report
暮らしに溶け込んだ二重課題を用いた在宅型の認知機能低下予防プログラムの開発
Project/Area Number |
18K17740
|
Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
横井 賀津志 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (50506912)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 生活行為 / 作業 / 二重課題 / 認知機能 / 地域在住高齢者 / 在宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の大規模調査により,「自分の時間を割いて,自分らしさを感じ,人生に意味をもたらす活動」と定義した生活行動は,セルフケア領域に多数存在し,健康関連QOLの高さと関連を認めた. 2019年度,地域在住高齢者15名に,生活行動に認知課題を組み込んだ予備的介入を実施した.認知課題は,先行研究より二重課題として認知機能向上に一定の効果を示した計算,文学的,語流暢性,記憶の課題とした.結果指標は,認知症予防に関する先行研究において採用されることが多いWMS-R,CAT下位項目の視覚性末梢課題,SDMT,PST,CASの質問紙,CES-D,SF-36とした.基本属性として教育歴,難聴,高血圧,糖尿病などの認知機能に影響する要因を聴取した. 結果,15名の参加者全員が6ヵ月間の介入を完遂し,有害事象は無かった.認知課題を組み込んだ作業は,ガーデニングと計算課題,食事の支度と語流暢性課題,入浴と記憶課題など多岐に及んだ.実施回数は,週平均3.6±1.7回であった.介入前後において,有意な改善を認めた指標は,WMA-Rの論理的記憶Ⅱ素点(p<0.01,effect size=0.51),CES-D(p<0.01,effect size=1.05),CAS(p=0.04,effect size=0.46),SF-36下位項目の社会生活機能(p=0.03,effect size=0.42),CATのPSTの正答率(p=0.03,effect size=0.46)であった.参加者からは,「習慣になった」,「言葉がすらすら出るようになった」など肯定的な感想があった.一方で,「二重課題に慣れてしまう」などの意見もあった.ランダム化比較試験を実施するにあたり,論理的記憶Ⅱの結果から推定したサンプルサイズは,各群42名であった.2019年度後半より,ランダム化比較試験を実施しているところである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【2018年度】 住民健診において,大切な生活行動と健康との関連性を明らかにした. 【2019年度】 地域在住高齢者に対して,生活行動に認知課題を組み込んだ二重課題を用いた在宅型プログラムの予備的介入を実施し,遅延性再生や注意機能(転換性注意)に有意な改善を認めた.さらに,うつ状態の改善と意欲の向上が認められた.この結果から,遅延性再生の結果よりサンプルサイズを推定し,現在ランダム化比較試験(生活行動に二重課題を組み込んだ群 VS 二重課題群 もしくは 大切な生活行動群継続群)を実施している.ただし,2019年3月に予定していた事後評価について,一部の参加者が,新型コロナの影響で参加できなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
【2020年度】 生活行動に二重課題を組み込む在宅型プログラムによる認知機能低下の予防効果を解明するため,ランダム化比較試験を継続実施し,解析する. 【2021年度】 介入終了後の継続率をインタビューにて解明する.最終的に,自宅でできる生活行動に二重課題の要素を組み込んだ認知機能低下予防プログラムを一般化するためのモデルを作成する.
|
Causes of Carryover |
2019年度後半の計画であったランダム化比較試験において,実施継続途中であるため研究参加者への謝礼および研究協力者への謝礼の支払いに充てる.2020年度は当初の予定通り,ランダム化比較試験を継続実施するため.当初の計画通り,使用額に変更はない.ただし,感染症に伴うわが国の状況により,介入期間が変更される可能性がある.
|