2018 Fiscal Year Research-status Report
不活動性筋痛の発生メカニズム解明と理学療法学的介入の効果検証
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18K17751
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
後藤 響 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (90813436)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不活動性筋痛 / 神経成長因子(NGF) / 理学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに,不活動性疼痛は骨格筋において認められることを明らかにし,その発生メカニズムの一部に神経成長因子(NGF)の発現が関与している可能性を突き止めている.しかし,NGFの機能的役割や他の分子の動態など,不活動性筋痛の詳細な発生メカニズムは不明であった.そこで,今年度は「不活動性筋痛の発生メカニズムにおけるNGFの機能的役割の解明」を主目的とし,NGF受容体の阻害剤を骨格筋に投与することによって,不活動によって生じる筋痛が軽減するか否かを検討した.実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット(n=30)を用い,1)4週間通常飼育する対照群(n=10),2)右足関節を最大底屈位で4週間ギプス固定した後,腓腹筋にNGF受容体の阻害剤であるK252a(Sigma, K1639)を投与するK252a群(n=10),3)その疑似処置としてPBS投与を行うvehicle群(n=10)に振り分けた.そして,腓腹筋の圧痛閾値をK252a(PBS)の投与前,投与後10・20・30・60分に評価した. 結果,NGF受容体の阻害剤投与実験では,K252a群の筋圧痛覚閾値は投与後10分からvehicle群より有意に高値を示し,この状況は投与後60分まで持続した.つまり,この結果はNGFの痛みの内因性メディエーターとしての作用を阻害した影響によるものと推測され,不活動性筋痛の発生メカニズムに骨格筋内におけるNGFの発現増加が関与していることは間違いないと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は不活動性筋痛の発生メカニズムにおけるNGFの機能的役割の解明に関して実験を進め,NGF受容体の阻害剤であるK252aを骨格筋に投与すると,短時間から筋圧痛覚閾値の上昇を認め,これは投与後60分まで持続するという結果が得られた.つまり,骨格筋内におけるNGFの発現増加が不活動性筋痛の発生メカニズムに関与することが明確となり,これは当初の計画通りに研究が進展した成果と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度,不活動性筋痛の発生メカニズムに骨格筋内におけるNGFの発現増加が関与していることを明らかにできたことから,今後はその発生メカニズムに寄与する分子機構について探索する予定である. NGFの産生細胞の一つであるマクロファージは,炎症性マクロファージ(M1)と抗炎症性マクロファージ(M2)に大別され,M1マクロファージが活性化すると炎症性サイトカインの一つであるIL-1βが発現し,痛覚閾値の低下を引き起こすといわれている.また,IL-1βのみならず,TNF-αといった炎症性サイトカインはNGFの発現を誘導することも知られている.つまり,不活動性筋痛の発生メカニズムにはマクロファージ,特にM1マクロファージを介した炎症性サイトカインの分子シグナリングの活性化が関与しているのではないかと仮説している. そのため,今後は不活動に曝した骨格筋におけるマクロファージならびにIL-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカインの動態を検索し,筋痛の発生状況との関連を検討するとともに,不活動性筋痛の発生メカニズムにおける末梢機構を明らかにする.具体的には,8週齢のWistar系雄性ラット40匹をギプスで2,4週間固定する不活動群(各10匹)と週齢を合致させるため10,12週齢まで通常飼育する対照群(各10匹)に分け,腓腹筋の圧痛閾値を経時的に評価するともに,腓腹筋を検索材料にM1・M2マクロファージやIL-1β,TNF-αの動態を検索していく予定である.
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Research Products
(6 results)