2019 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷者のリハビリ応用を目指した経皮的脊髄刺激の神経生理学的効果の検証
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18K17760
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
一寸木 洋平 東京国際大学, 人間社会学部, 講師 (60778942)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊髄刺激 / 反射 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、脊髄損傷者の運動機能回復を促進させるための新たなリハビリテーション手法を開発することである。この目的を達成するために、本研究では非侵襲的に脊髄神経回路を刺激可能な経皮的脊髄刺激法の神経生理学的効果を明らかにする。 今年度は連発脊髄刺激用の電気刺激装置を購入することができ、刺激強度、刺激頻度を調整しながら最適な刺激設定を探索的に調査した。そして、連発脊髄刺激の神経生理学的効果を調べるためにH反射法を用いて予備実験を重ねることができた。連発脊髄刺激の強度設定を数段階に設定して実験を行ったところ、一定以上の刺激強度で刺激することで単シナプス性脊髄反射経路の興奮性が下がることが分かった。 研究成果としては、経皮的脊髄刺激を用いた論文を発表することができた。1)Experimental Brain Research誌に掲載された研究では、グリップ課題、ピンチ課題などの上肢筋の収縮により、下肢の複数の筋の脊髄反射回路の興奮性が同時に増加することが明らかになった。この結果は、経皮的脊髄刺激が単純に運動神経軸索を刺激しているのではなく、感覚神経を刺激して脊髄内の神経回路を興奮させることが可能であることを示す証拠となった。2)共同研究として実施したJ Neurophysiology誌に発表した研究では頚髄刺激が脊髄神経回路を介した反応を誘発可能であることを報告した。3)共同研究として実施したBrain Sciences誌に発表した研究では、歩行に関連する運動イメージが脊髄刺激によって誘発された複数筋の脊髄反射興奮性を修飾することを報告した。いずれの結果も、本研究目的を達成する上で、重要な知見であったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
連発脊髄刺激についての神経生理学的効果について明らかにする予定であったが、海外の研究グループが同様の研究課題に取り組んでいるため計画の変更をせざるを得ない状況になった。当該年度においては、連発脊髄刺激に関する予備実験を実施できたものの、公表できるレベルのデータ数はそろっておらず計画はやや遅れている。 一方で、経皮的脊髄刺激を用いた共同研究については、順調に進んでおり、英文誌に採択されている(Kaneko et al., 2019;Masugi et al., 2019; Saito et al., 2019) 。いずれの研究も連発脊髄刺激の効果を明らかにする上で重要な基礎的知見であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型感染症拡大の影響を受けて、ヒトを対象とした実験は事態が収束するまでは実施できない状況である。必要備品の購入や実験システムの構築など実施可能な範囲で準備を進めていく予定である。海外の研究グループが予想を上回るスピードで、連発脊髄刺激に関する論文を公表しているため、海外の論文を再調査し、実験計画を再度調整していく予定である。感染症が収まった段階で実験を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)