2018 Fiscal Year Research-status Report
線維芽細胞による基底板構築に着目した骨格筋の老化に対するリハビリテーションの開発
Project/Area Number |
18K17776
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
金澤 佑治 大阪人間科学大学, 人間科学部, 講師 (60620656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 老化 / 骨格筋 / 運動 / 基底板 / Collagen IV / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、老化により損傷しやすくなった骨格筋の回復障害に対して、線維芽細胞の活性化を糸口にリハビリテーション的治療を開発することである。線維芽細胞は筋の回復過程で筋線維の外枠で筋線維を支える基底板を築く重要な役割を果たしている。老化による線維芽細胞の活性低下は基底板構造に異常をもたらし、筋は脆弱化して損傷しやすくなる。この脆弱化を阻止すべく、本研究では老化動物を用いて骨格筋内の線維芽細胞を活性化する介入を探索する。主な研究項目は、①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明、②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定、③基底板構築を促す因子における治療的ポテンシャルの検証の3点である。 まず①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明については、老年ラットを用いて骨格筋の遺伝子解析を実施した。その結果、老年ラットでは筋損傷後の回復過程において基底板の主成分であるCollagen IVやそのフォールディングに関与する因子の遺伝子発現量が若年よりも低下していることが確認された。このことは老化は基底板の主成分であるCollagen IVの産生能力を低下させていることを示唆している。 次に②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定については、まず若年ラットを用いて骨格筋のCollagen IV産生が上昇する因子を探索した。その結果、トレッドミル走行後に骨格筋内のCollagen IVの遺伝子発現が上昇すると同時に、TCF4/TCF7L2陽性の線維芽細胞の発現数も増加することが確認できた。このことは運動が線維芽細胞によるCollagen IV産生を伴う基底板構築を促すことを示唆している。 最後に③基底板構築を促す因子における治療的ポテンシャルの検証については、前述した運動介入を老年ラットに処方して効果を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な研究項目は、①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明、②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定、③基底板構築を促す因子における治療的ポテンシャルの検証の3点である。 現在までに2つの項目について実験を進めている。①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明と②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定については、老化がCollagen IV産生を低下させる分子メカニズムの一部を解明することができ、さらにトレッドミル走行後に骨格筋内のCollagen IVの遺伝子発現が上昇すると同時に、TCF4/TCF7L2陽性の線維芽細胞の発現数も増加することが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は3つの研究項目のうち3つ目にあたる③基底板構築を促す因子における治療的ポテンシャルの検証を推し進めていく予定である。具体的には運動介入を老年ラットに処方して効果を検証する予定である。また、すでに着手した①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明と②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定において、得られた知見は学会発表と学術誌への投稿を随時実施する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は既存の実験機器を用いた実験系で予想よりも多くの実験データや成果を得ることができた。 そのため主な使用用途は消耗品の購入となり、次年度使用額が生じた。
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