2018 Fiscal Year Research-status Report
異言語話者間の学習をめぐるフィルムエスノグラフィー
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18K17807
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
鷲谷 洋輔 同志社大学, スポーツ健康科学部, 助教 (60786276)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 質的調査法 / フィルム・エスノグラフィー / 身体論 / 学習論 / 薄い記述 / ベルクソン / 引き算的メタメソドロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、特にデータの収集に集中して取り組む計画を設定していた。調査実施にあたり、調査協力者の都合や私自身の大学での業務との兼ね合いなどからまとまった時間が取れず、短期間のデータ収集を9月、2月の二度実施した。これら調査では当初想定した時間を割くことはならなかったものの、理論的な展開を進めていくのに重要な示唆が得られた。 また、それらのタイミングに合わせて、トロント大学のアトキンソン教授、キッド教授、ドネリー教授らと研究会を実施し、データの検討、及び理論的な議論を行った。特に、本調査をベースに発展させている「薄い記述」「引き算的メタ方法論」といったアイディアについて、その独自性への期待が共有されている。単に一つの知見として成果を提示するだけでなく、全く新しい学術的方法論として展開することの意義と可能性を着実なものにしていきたい。 こうした短期間の調査と検討会に併せて学会での発表を行った。質的調査に特化した学会では、オーディエンスの好感触を得た一方、論点と意義とをより明確にすることの必要性も感じられた。 これらを踏まえつつ、理論的な精査を展開したことが本年度を通じた成果といえる。特に、ベルクソンの直観論と時間論の検討を足掛かりに、「引き算的メタメソドロジー」の提起へと展開する道筋をつけた点は、本プロジェクトにおける一つの重要なブレークスルーとなった。 なお、本年度かなわなかった長期的な調査の実施は、2019年度8月に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの収集はやや難儀しているものの、理論的な展開や発展性が十分に期待ができるデータが得られた。学会や研究会を通じ、特に英語圏の研究者から建設的なコメントを含めておおむね好意的な反応を得ている。なお、ビザ取得の関係で予定した調査(12月)がキャンセルとなり、全体的な調査計画に多少の影響が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、長期の調査を行うことで、これまで注意を向けきれなかったような事柄を汲み取ることを課題とする。フランス、カザフスタンでの調査を計画していたが、調査協力者の帰省、帰国等のタイミングが合わないことから、ほとんどの調査はカナダ、オンタリオ州にて行うことに切り替える。 これに併せて理論的な検証をさらに深めていくことが今年度の大きな課題となる。ベルクソンの理論を検証するとともに、禅をはじめとする日本的な思想を参考にすることで、「薄い記述」「引き算的方法論」の理論的な展開を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
物品購入に関してできる限り手持ちの機材を用いた点が繰越金発生の最大の事由となっている。今後もできる限り手持ちの機材を用いて支出を抑えるが、品質劣化が見られる機材もいくつかあること、さらにデータを管理するためのデバイスが必要となることを鑑み、2019年度に必要な機材の購入として拠出する。
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