2020 Fiscal Year Annual Research Report
Film ethnographic inquiry of learning in multimodal communications
Project/Area Number |
18K17807
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鷲谷 洋輔 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60786276)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フィルムエスノグラフィー / 方法論 / 質的調査法 / 身体知 / 言語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型ウィルスの影響により現地でのデータ収集が叶わなかった。調査対象の活動も大きく制限を受けていることを鑑み、これまで得られたデータをもとに理論的検討と考察、学術誌への投稿を行った。 本研究は異言語話者間の身体運動に関する学習に注目しつつ、そこで生起する言語的なコミュニケーションの複雑さを複雑なままにとらえる手法を模索するものであった。その一つとしてフィルムエスノグラフィーを取り上げたが、これは言語化されない事象をいかに言語に代わって表象するかというアプローチではなく、言語化というメタ方法そのものをできる限り約めるアプローチを検討するものとなった。これを通じ、現場の実践をいかにとらえるか、特にフィールドワークを主体とする身体文化の研究に新たな視点が喚起された。たとえば、異言語話者間の身体運動を検証することで、多様な言語コミュニケーションによって動きの全体性が一定の言語記述によって説明され、共通言語として扱われること、それらが(身体)知として扱われていく点が整理された。そこに指摘されたのが、現場の実践に研究者が挿入しがちな足し算的な思考である。これを「足し算的方法論」と名付け、フィルムエスノグラフィーの手法はそれに対する「引き算的方法論」を喚起する点が考察された。この成果の一部は学術誌にて発表されており、事例に関する論考は国際誌の査読中、方法論的な論考は投稿準備中である。 「引き算的方法論」の意匠は、昨今の質的調査法をめぐる議論やノンリプレゼンテーショナルセオリーなどの論考にみられるアート作品への近接にも通じる新たな論点を示したことにある。非西欧的な知見への関心も高まっているなか、本研究の成果は東洋的な身体作法や武芸、芸術に触発された新しい観点を提示する可能性も秘めている。さらなる理論的な考察、およびその具体的な成果の提示は今後の課題として残されている。
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Research Products
(1 results)