2018 Fiscal Year Research-status Report
種々の曝露環境における脊髄損傷者の胃腸内温変動と損傷レベルとの関連性
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18K17826
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
林 聡太郎 福山市立大学, 都市経営学部, 講師 (80760040)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運動生理学 / アダプテッドスポーツ / 体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、健常な成人男性7名を対象に、安静時における異なる3点での深部体温の変化を明らかにした。直腸温については従来から使用している直腸温のサーミスタ温度プローブ(日機装サーモ株式会社)を使用した。鼓膜温は耳栓型サーミスタ温度プローブを使用した。これらのデータの導出にはNT Logger(日機装サーモ株式会社)を使用した。胃温の計測には、カプセル型の温度センサー(e-celcius Bodycap)を飲み込み、無線でロガーに転送することによって計測した。体温の測定は、室温が22度の環境を作り、1時間の安静滞在中に実施した。これらの実験は、福山市立大学の研究倫理審査委員会の承認を得て行った。 異なる3点の温度変化は、中立温では変化することなく一定の値をとったが、暑熱下においては、有意な上昇を観察した。また、3点の変化にはラグが生じており、直腸温と胃温が先に上昇を認め、その後に鼓膜温が上昇した。それぞれの最高値は直腸温でもっとも高値を示し、次いで鼓膜温、胃温の順であった。特に鼓膜温については外殻温度に近く、深部体温を過小評価している可能性を示した。 また、次の研究課題の遂行のために、脊髄損傷者1名から聞き取り調査を行った。調査対象者は30代の頸髄損傷(C5)を受傷しており、鎖骨下および肘部外側以下の麻痺を有する者である。C5レベルの損傷では、血管運動の損失だけでなく、麻痺部における発汗作用も欠落していることから暑熱下の体温調節が難しい。したがって、暑熱下での作業では、頭部からの発汗が促進されるが、体温は下がることなく上昇を続けるが、一方で四肢の冷感が顕著である。しかしながら一度体温の低下が進むと、全身の筋量が相対的に少ないことが推察されることから、体温を維持することが困難になり寒さを訴えるなど、暑熱下においても熱放散と産熱の平衡が取れていないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、使用する機器の選定を実施し、まずは購入した機器の妥当性と信頼性を検討した。使用する機器から導出されたそれぞれのデータの信頼性が担保できたことから、即座に計画に則った実験の遂行をすることが可能であった。研究協力者の募集も概ね順調に進んでおり、今後の研究活動も滞りなく推進することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、当初の研究計画に則って実施する。健常者における異なる3点(鼓膜温、直腸温、胃温)の深部体温の変動を異なる環境温度にて測定し、飲料水の温度の違いによって引き起こされる体温変動についても引き続き測定を行うこととする。飲料水の温度による深部体温の変化については、室温を一定とし、3点の深部体温を計測する。実験の場所は、継続して福山市立大学の生理学実験室とする。 また、脊髄損傷者を対象とした深部体温の測定を実施する。現段階で、頸髄損傷(C5)の損傷者3名からの研究協力を得ることができたことによって、当初の研究計画よりも進んで実施することが可能となった。しかしながら、計画していた直腸温の測定に関しては、研究協力者の体位変換が困難であり、研究協力者自身での直腸温計の挿入が困難なことから、直腸温の測定は行わず、深部体温は胃温と鼓膜温のみとし、外殻温度である皮膚温に変更することで測定を実施する。実験を遂行する場所は、研究協力者が普段各スポーツを練習している場所で、なおかつ空調の設備があり、室温を調節できる部屋にて実施する。関東圏在住の協力者においては、国立スポーツ科学センターの実験室を利用する予定である。 今後の研究協力者の募集については、岡山県で研究協力を得られているパラアスリートのチームメイトと、神奈川県でパラスポーツを実施している者に研究協力の依頼を行っているところである。
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