2018 Fiscal Year Research-status Report
硬化した筋の回復を加速させる方策 アスリートへの実践的研究
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18K17830
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
稲見 崇孝 慶應義塾大学, 体育研究所(日吉), 助教 (10750086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マラソン / リカバリー / elastography / 材質特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が確立してきたストレッチングとマッサージの基礎的手法によって一時的に硬くなった筋が回復(リカバリー)する過程を比較/検証するものである。本研究の目的およびテーマは、1)硬くなった筋からの回復は両手技によって加速するか?、2)両手技の繰り返しは回復の加速に影響するか?、3)同一筋内のどの部位から回復は起こるのか?、4)回復した筋の硬さはパフォーマンスの向上に寄与するのか?の4点であり、当該年度は1)および2)にて正確にストレッチングを実施するための装置開発と、3)の検証、4)の予備実験を行なった。スポーツ障害が集中する下肢筋群を対象筋に設定し、同じ(ランニング)動作を長時間反復するフルマラソン競技を対象種目とした。筋の硬さ評価には超音波エラストグラフィ装置を用いた。 1)と2)で用いるストレッチングの装置に関して、従来は安価で使い勝手の良い装置が用いられるが、角度設定が3-5度刻みと詳細設定に向かないこと、実施中に加わえられる力が不明なこと、が指摘されている。そのため、詳細な角度設定が可能な装置の開発に着手し、装置完成の目処を立てることができた。次年度からの実験で運用する。 3)においては、フルマラソン後の同一筋内の硬さ変化に差異はないか?を明確にするため大腿直筋内部(近位・筋腹部・遠位)における硬さ変化の比較を行った。筋の硬さが最も硬くなるマラソン1日後において、遠位部は近位部や筋腹部よりも有意に硬いことが明らかとなり、同一筋内でもリカバリーの反応が異なる可能性が高まった。 4)においては、これまでも測定してきた機能特性のひとつである筋力や可動域測定はそのままに、文献渉猟の結果からパフォーマンスの指標として垂直跳びを採用し、予備的実験を行なった。その結果、硬さ変化のパターンと同様に顕著な差が見られたため、次年度からの測定に反映する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、本研究はこれまでに蓄積された評価法などの知見を用いて一時的に硬くなった筋が回復する過程の比較/検証に焦点を絞っている。したがって当該年度においては、【研究実績の概要】で述べた4つ全てのテーマの段階的な着手ではなく、4つのテーマを同時並行にて遂行することができた。 当該年度対象種目となったフルマラソン競技の大会は、秋から冬にかけて開催されるものが多く、当該年度が明けてから十分な準備期間を設けることができた。これにより、対象となる大会を運営する組織との現場調整にも時間を割けたため、ゴール付近にブースを構えることができた。しがたって、フルマラソン完走直後(60分以内)のデータ取得が可能となっている。スポーツ競技や臨床現場に還元されやすい研究デザインを常に念頭に置くことで複雑化する要因をシンプル化できる。また、これまで測定を行う現場において、データを取得した際に都度行わなければならなかった粗解析を、その場ではなく、後日、解析することが可能になったことも計画の順調な進行に貢献しており、同時並行での遂行を可能にした理由と考える。これらの理由により、全体的には計画通り進行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度と同じく、上述テーマの1)~4)全ての実験を同時並行にて実施し、多くのデータを取得する。リカバリーの過程を検証するために取得する筋の硬さ変化に関する膨大な材質データと、それらの時間依存的な時系列データに加え、骨格筋の機能・形態特性との相互作用検証に必要なパフォーマンス関連項目を測定することで両手技の実施による回復の加速化を多角的に比較/検証する。また、今年度着手した“立位でストレッチングする際の足関節角度を1度刻みで詳細に設定する装置”の運用とマッサージ(圧刺激)によって、アスリートにおけるパフォーマンスへの影響を客観的かつ定量的に明確化する。すでに次年度に対象とするマラソン大会の選定を終え、当該大会を運営する組織との調整を進めている段階であり、今年度と同じ環境設定の確立に向け準備が進んでいる。秋から冬にかけて集中的なデータ取得を行ったあとは、順次、材質特性の位置情報に関するデータ解析に着手する。上述のように、測定を行う現場ではなく、後日解析することが可能になったため次年度末を解析期間に設定する予定である。
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Causes of Carryover |
<理由>年度内下半期の学会にて成果を発表する計画を予定していたが、次年度に開催される国際学会と国内学会での発表の方が知見に沿う内容であることから発表先を変更した。そのため、学会発表に関する旅費等が次年度使用額となった。また、次年度集中的にデータ取得を行うため、当該年度の謝金も次年度使用額となった。
<使用計画>上記の理由から、学会発表先を変更して利用する予定である。また秋から冬にかけて行う集中的なデータ取得期間において謝金を使用する予定である。
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[Journal Article] Tracking of time-dependent changes in muscle hardness after a full marathon2018
Author(s)
Inami, T., Nakagawa, K., Yonezu, T., Fukano, M., Higashihara, A., Iizuka, S., Abe, T., Narita, T.
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Journal Title
J. Strength Cond. Res.
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The reliability, and discriminative ability of the identification of functional ankle instability questionnaire, Japanese version.2018
Author(s)
Mineta, S., Inami, T., Fukano, M., Hoshiba, T., Masuda, Y., Yoshimura, A., Kumai, T., Hirose, N.
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Journal Title
Phys. Ther. Sport
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Optimum displacement of muscle in relation to thickness for biceps brachii hardness measurement using a push-in meter2018
Author(s)
Murayama, M., Inami, T., Shima, N., Nosaka, K., Uchiyama, T., Yoneda, T.
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Journal Title
Biomed. Physical. Eng. Express
Volume: 5
Pages: 17001
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Study on mechanism of the increase of range of motion by foam rolling2018
Author(s)
Yoshimura, A., Inami, T., Schleip, R., Mineta, S., Shudo, K., Hirose, N.
Organizer
The 5th Fascia Research Congress 2018