2018 Fiscal Year Research-status Report
運動後の筋力回復・筋肥大を促進するアルギニンの新たな生物学的役割
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18K17839
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
神崎 圭太 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (30637286)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルギニン / 骨格筋 / 伸張性収縮 / 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / NADPHオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、アルギニンの摂取が伸張性収縮後の筋力回復を促進する原因が、1) アルギニンから一酸化窒素合成酵素(NOS)により産生される一酸化窒素(NO)の作用にあるか、2) NOSやNADPHオキシダーゼが産生する活性酸素・窒素種による酸化的修飾を防止することにあるかを明らかにすることを目的とし、下記の実験を行った。 Wistar系雄性ラットを、対照(C)群、アルギニン(A)群、L-NAME(N)群、アルギニン+L-NAME(AN)群に分類した。投与方法は自由飲水とし、0.4%アルギニン溶液や0.03% L-NAME(NOS阻害剤)溶液を収縮負荷3日前から投与した。その後、三種混合麻酔下において、伸展装置と電気刺激を用いて、片脚の下腿前部の筋に200回の伸張性収縮を負荷した。反対脚は安静脚とした。収縮終了3日後に、長趾伸筋と前脛骨筋を摘出し、筋力測定と生化学的分析に供した。 C群、N群、AN群では、長趾伸筋の固有筋力の有意な低下がみられたが、A群ではこの差異がみられなかった。NADPHオキシダーゼの発現量は、C群とAN群で有意に増加したが、NOSの各アイソフォームの発現量には、全ての群において、有意な変化はみられなかった。酸化的修飾の指標として、ニトロ化、カルボニル化の分析も行ったが、すべての群において、有意な変化はみられなかった。 以上の結果は、アルギニンの摂取が伸張性収縮後の筋力回復を促進することに、1) NOが関与すること、2) 酸化的修飾の防止は寄与しないことを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、ICAM-1、VCAM-1などの接着分子の発現、およびHE染色像やLy-6Gの免疫染色像による好中球の浸潤の評価を分析する予定であった。しかしながら、ウエスタンブロット法によるニトロ化、カルボニル化の検出に時間がかかり、当初予定していた測定をすべて行うことができなかった。できなかった項目については、2019年度に分析を実施したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は主に、アルギニンの摂取が一過性の筋収縮後の筋タンパク質合成や数週間のトレーニング後の筋量・筋力増大に及ぼす影響を検討する予定である。これまでに、筋タンパク質合成速度、および合成シグナルに関わるタンパク質の分析に使用する抗体がうまくワークすること確認している。アルギニンの投与量を決定する予備実験を早急に行い、今年度予定している内容を速やかに実施したい。
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Causes of Carryover |
前述のように、2018年度はニトロ化、カルボニル化の検出に時間・費用がかかり、当初予定していたICAM-1、VCAM-1などの接着分子の発現、およびHE染色像やLy-6Gの免疫染色像による好中球の浸潤の評価ができていない。これらの測定に必要な消耗品を購入していないため、次年度使用額が生じた。 2019・2020年度は、2018年度に未購入の消耗品を購入するとともに、2019・2020年度に購入予定だった消耗品等を購入したい。
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