2019 Fiscal Year Research-status Report
Construction of spectator sports product development system model in professional sports organization
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18K17841
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Research Institution | Takamatsu University |
Principal Investigator |
宇野 博武 高松大学, 経営学部, 講師 (70803253)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スポーツ経営学 / プロスポーツ / フロントスタッフ / 製品開発論 / イノベーション / スポーツプロダクト / みるスポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プロスポーツ組織のフロントスタッフは如何にすれば多数の人々に受け入れられる「みる」スポーツ・プロダクトを開発できるのか、という問いを究明することである。2018年度には、プロダクトの生産に関わるフロントスタッフの仕事内容を明らかにし、「みる」スポーツ・プロダクトの革新性概念を検討した。「みる」スポーツ・プロダクトが多様な人々に受け入れられるためには、そのプロダクトが多様な便益を内包している必要がある。したがってその開発活動の基本的課題は、新規なプロダクトを既存事業領域に投入し、新たな便益を発生させることにある。革新性概念の検討によって得られたのはこの認識であった。 以上を踏まえ2019年度には以下の研究成果を得た。第一に、「みる」スポーツ・プロダクトの開発活動に関わる理論的問題を提示した。元来、スポーツ経営学においてスポーツプロダクトは、市場ニーズを誘因としたリニアな活動のプロセスによって開発されると考えられていた。ところが上述したように、開発活動の基本的課題は新たな便益を発生させる点にある。このとき、開発活動以前には存在しなかったニーズを開発活動の誘因とはみなせないという理論的問題が浮上する。この理論的問題は、一般経営学において既に検討がなされている。2019年度はこれらの知見に依拠しながら、現実の開発活動を捉える分析枠組みを提示した(日本スポーツマネジメント学会において公表)。 第二に、以上の分析枠組みを経験的に検討するため、ケーススタディを実施した。上述の理論的問題を解決するためには、事業領域で新たな便益の発生が認められたプロダクトの開発活動であり、その開発活動のプロセスを客観的資料によって確認できる事例を対象とした研究が要請される。2019年度は、この要件を満たす事例を対象としたフィールドワークを実施し、得られたデータの分析をおこなった(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度はケーススタディを実施し、新たな便益を創出する「みる」スポーツ・プロダクト開発活動の論理を示唆することを計画していた。しかし以下の理由により、経験的データの収集と研究成果の報告に遅延が生じた。 第一に、新型コロナウイルス感染症の影響により調査の中断を余儀なくされた。2019年度は10月頃より本格的な調査に着手でき、12月までに関係資料の収集とフィールドワーク、関係者への1回目のインタビュー調査を完了させた。これらのデータ分析を完了させ、2月から3月にかけ2回目のインタビュー調査を予定していた。しかし、この調査が感染症にともなう県外移動自粛により実施不可能となった。 第二に、ケーススタディの成果報告を予定していた学会が延期となった。計画では、2020年2月の日本スポーツマネジメント学会において上記した理論研究の成果を発表し、2020年3月の日本体育・スポーツ経営学会においてケーススタディの成果を公表する予定であった。しかし、日本スポーツマネジメント学会での成果報告は遂行できたものの、感染症の影響により日本体育・スポーツ経営学会が夏に延期された。 以上の遅延により、研究活動に若干の遅れが生じている。ただし6月23日現在には、オンライン会議システムを利用するなどの工夫によって2回目のインタビュー調査に着手できている。十分な成果が得られるよう今後も工夫を重ねていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究成果により、当初の研究計画に変更が生じた。当初の研究計画では2020年度に、プロスポーツ組織フロントスタッフの開発活動とプロダクト品質の関係性を、量的研究によって検討するという研究課題を設定していた。しかしながら2019年度の研究により、「みる」スポーツ・プロダクトの開発活動には先行研究において十分に検討・議論されていない理論的問題が潜んでいることがわかってきた。この理論的問題には研究方法論にまで踏み込んだ検討が要請される。そして、この理論的問題の解決なくしては、効果的な開発活動のプロセスやそうした活動を支える組織的要因を明らかにすることはできないと考えられる。改めて考えると先行研究では、そもそも「みる」スポーツ・プロダクトの開発活動自体について十分な経験的検討がなされていない。一般経営学において市場ニーズに適合的な開発活動という従来の論理について再検討がなされている現況では、新たな便益を創出するプロダクトが開発される論理そのものを明らかにすることが優先されるべきだと考えられる。 そこで本研究では、新たな便益を創出する「みる」スポーツ・プロダクトが開発される論理を、複数ケーススタディによって検討することを目指す。上述したように若干の遅れが生じているものの、現在、本研究課題に適した極端事例の調査が進行している。このケーススタディより得られた知見の理論的一般化を進めるため、今後は性格の異なる便益が生じた事例を対象とした種目横断的な事例研究を実施していく。
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Causes of Carryover |
2019年度は新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた調査や学会発表が中断・延期され、旅費の支出が滞った。また、感染症の影響により、分析用パソコンなどの購入した研究調査用物品の納品に遅延が生じた。 2020年度には、中断・延期している調査や学会発表のための旅費を当初の計画通り支出する。また、当初計画していた研究調査用物品を予定通り購入する。
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Research Products
(2 results)