2018 Fiscal Year Research-status Report
競技者における腸内環境の違いがヘプシジンを中心とした鉄代謝に及ぼす影響
Project/Area Number |
18K17850
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
石橋 彩 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツメディカルセンター, 契約研究員 (40756524)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 持久性競技者 / ヘプシジン / 腸内細菌 / 栄養摂取状況 / 貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常的にトレーニングを行う競技者においては、鉄欠乏性貧血の発症リスクは増加する。これまで、鉄欠乏の主な要因として、食事での鉄の摂取不足などが指摘されてきた。そのため、鉄欠乏予防を目的とした鉄サプリメントの服用する行為が取り入れられている場合もあるが、高容量の鉄摂取にも関らず、鉄欠乏が改善しない例もみられる。競技者に対して鉄欠乏は解決すべき急務の課題であるが、有益な知見は示されていない。 近年、ヘプシジンの分泌亢進に起因する鉄吸収阻害によって鉄欠乏が誘発されるという作用機序が明らかとなった。ヘプシジンは、肝臓から分泌されるペプチドホルモンであり、体内での鉄の利用を阻害する働きを有する(Gantz et al. 2003)。興味深いことに、炎症性サイトカインであるInterleukin-6の増加により体内でのヘプシジンの合成が増加する。このことから、ヘプシジンの分泌応答は、炎症に強く影響している可能性が考えられるが、ヘプシジンの産生を抑止するための方策は依然として不明である。 ヒトの腸には、約100兆個の菌が宿主と相互に共生しており、栄養、代謝機能および免疫系に影響を及ぼす。食事での鉄は、腸管から吸収されることを踏まえると、腸内細菌叢の違いがヘプシジンを介して鉄代謝に影響する可能性が考えられる。そこで本研究では、競技者における、腸内環境と鉄代謝の関連性の実態を検討することを目的とした。対象は、国内のトップレベルの持久性競技者(16名)とし、一過性のトレーニング前後に血液検査を実施した。加えて、食事調査や利用しているサプリメント、腸内細菌検査の調査を実施した。その結果、運動3時間後のヘプシジン濃度は、運動前と比較して有意な増加がみられた。食事および腸内細菌検査は現在解析中であり、今後ヘプシジンの上昇の程度や貯蔵鉄、習慣的な食事と腸内細菌叢に関連があるかどうか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した課題は、概ね着実に進行している。データの収集は、予定通り行うことができているが、腸内細菌検査に関して検体数の一部変更が生じている。理由としては、解析方法を当初の計画から変更したため、1検体あたりの解析費用が高額となっていることが挙げられる。現在、食事調査、腸内細菌に関して、解析を進めている。解析データが揃った後に、QIIMEを用いたデータ分析を実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して、持久性競技者における腸内細菌と鉄代謝の実態調査に関して、対象選手を増やして実施する。また、前述の研究課題と並行して、鉄欠乏を有する競技者に対する事例的研究も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、必要な実験実施に必要な旅費や消耗品などを購入した結果、約3万円が残額として生じた。
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