2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17891
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸 哲史 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 助教 (70748946)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 睡眠 / 非侵襲的脳刺激法 / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠は健康の基盤を成すが、その実体は、睡眠段階と呼ばれる複数の状態が遷移を繰り返す動的で複雑な現象である。本研究では、睡眠中の脳の状態遷移現象に着目した、非侵襲的脳刺激法による睡眠動態制御手法を開発することを目的とする。
2019年度は、前年度に構築した刺激実験系を用いた睡眠実験の遂行を進め、データ解析に着手した。被験者は健常若年者とした。睡眠の測定は、米国睡眠医学会による国際標準法に従い、脳波、眼電図、筋電図、心電図などの生体信号を記録した。また、睡眠の前後で、主観的な眠気や疲労感を測定した。これまで得られたデータから、睡眠中に特定の周波数の非侵襲的脳刺激を行うことにより、Sham刺激時と比較して、睡眠中の自律神経活動が副交感神経優位になる傾向があること、また睡眠前後での主観的眠気や疲労感の改善度が大きい傾向にあることが確認された。一方で、心拍数は刺激条件において増加する傾向があることも確認され、より詳細な検討が必要であることが示唆された。特に、脳波データと突き合わせた形での検討が必要である。
また、睡眠動態制御手法を開発するには睡眠動態の制御機序に関する理解を深める必要がある。こうした問題意識の下、睡眠動態に異常があると考えられる睡眠時ブラキシズム患者群の睡眠動態の特徴についての検討を行い、睡眠時ブラキシズム患者は健常者とは異なる睡眠動態の特徴を有していることを明らかにし、原著論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
睡眠中に非侵襲的脳刺激を行う系を構築し、睡眠実験の遂行やデータ解析に取り組んでいる状況である。これまでに、睡眠中に特定の周波数の非侵襲的脳刺激を行うことにより、睡眠の質が改善する可能性があることを示すデータが得られてきている。また、睡眠時ブラキシズム患者の睡眠動態の特徴に関する研究成果をSLEEP誌に発表した。睡眠の動的制御機構の解明に向けた研究が多角的に進展している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き睡眠実験の遂行及びデータ解析を進め、学会発表や論文執筆を行う。得られた知見を基盤とし、新たな睡眠動態制御手法の開発を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため、3月に予定していた実験が延期となった。主に、実験協力者への謝金、実験に必要となる消耗品購入のための支出が抑えられたため、残額が生じた。生じた次年度使用額は、次年度の実験において使用する。
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Research Products
(8 results)